資本主義の終焉と歴史の危機

書影

著 者:水野和夫
出版社:集英社
出版日:2014年3月19日 第1刷 2014年7月14日第9刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 今年の新書大賞の第2位。ちなみに第1位は「地方消滅」。「終焉」とか「消滅」とか、マイナスイメージの言葉を含むタイトルが上位を占める。ご時世かもしれないけれど、これでいいのか?とも思う。

 著者は証券会社のチーフエコノミストや、内閣官房の審議官などを歴任した、いわば経済分析のエキスパート。その著者が「資本主義の死期が近づいている、それに伴って民主主義・国民国家という近代社会も危機に瀕している」と言うのだからショッキングな内容だ。

 詳細な数値を上げて、米国、BRICSなどの新興国、日本、ヨーロッパのそれぞれの状況が解説されている。解説そのものは少し難解で、よく読まないとしっかりと胸に落ちない。でも、もう少し大づかみな理解なら捉えやすい。

 つまりこうだ。1.資本主義は「資本の増殖」という「成長」を前提とした仕組み。2.また「周辺」から「中心」に富を集中させることで成り立っている。例えば地方から都市に、途上国から先進国に..。

 3.そして「周辺」を拡大することで「成長」を実現している。4.ところが、グローバリゼーションによって、もうこれ以上「周辺」を広げる余地がない。5.資本主義は「成長」できないと成り立たない。→「終焉」を迎える。

 理路整然としているけれど、こんな主張はエコノミストの間では少数派だろう。著者自身も「私は「変人」にしか見えないことでしょう」と書いている。

 それでも私は、すごく説得力を感じた。安倍政権をはじめ世界中の政府が「成長」を声高に叫ぶのが、著者の主張の正しさの証左ではないかと思う。しかし無理な「成長」は歪みを生む。

 その歪みが臨界点を越える前に、「成長」を必要としない次のシステムを、というのが著者の希望だけれど、...状況は絶望的だ。

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