世界を変えた10冊の本

著 者:池上彰
出版社:文藝春秋
出版日:2011年8月10日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 友達に、「イチオシ」と薦められて読んでみた。これは読み応えがあった。

 1冊の本が「世界を変える」ことなんてあるのか?ある本との出会いが、誰かの人生を変えることはあるだろう。それは容易に想像できる。でも「世界」となると..というのが、読む前に感じたことだった。

 著者が選んだ10冊は次のとおり。「アンネの日記」「聖書」「コーラン」「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」「資本論」「イスラーム原理主義の「道しるべ」」「沈黙の春」「種の起源」「雇用、利子および貨幣の一般理論」「資本主義と自由」

 全部を読んだ方は非常に少数だと思う。全部を知っている方だって多くはないだろう。宗教に関するものと経済に関するものが多い。私は経済学を学んでいたことが幸いして「道しるべ」以外は知っていた。「資本論」と「雇用、利子および貨幣の一般理論」は読んだことがある。ただし「読み終える」だけの興味と忍耐は持ち合わせていなかった。

 「宗教と経済に関するものが多い」ことは何となく合点がいく。この2つは共に国、集団、個人などの各階層における「規範」に関わるからだ。様々な場面でどのような行動をとるか(とることが良いか)を、真の意味で自由に決定することは難しい。規範(ルール)が必要だ。ルールを定めたという意味で、これらは「世界を形作った」と言えるだろう。

 考えたことを2つ。一つ目は「聖書」と「コーラン」「道しるべ」について。「おとなの教養」にも書いてあったのだけれど、「聖書(旧約聖書と新約聖書)」と「コーラン」は、まったく別のものではなく、一続きのもの、イスラム教にとっても「聖書」は「経典」の1つなのだ。強いて説明をすれば「コーラン」は「聖書」の教えをより厳格にしたもの、「道しるべ」はそれをさらに「純化」したものらしい。

 いわゆるイスラム原理主義者は、「道しるべ」を規範としている。オサマ・ビンラディンもこの本の思想を信奉している。彼らが他の宗教、特にユダヤ教やキリスト教に対して不寛容に見えるのは、他の宗教が自分たちと違うからというよりは、教えを「正しく守っていない」と感じるからなのだろう。

 二つ目は「アンネの日記」。10冊の中でもとりわけポピュラーで読んだことのある方も多いだろう。それだけに却って「なぜこの本が?」と思ってしまう。しかしこの本には、欧米の人びとの心に楔を打ち、イスラエル建国を支えた力があるという。中東問題の不可解な点が少しほぐれた。

 読む前に感じた、1冊の本が「世界を変える」ことなんてあるのか?という疑問には答えが出た。実際にあったのだ。読んでみたいと思っても、この10冊のうち多くは読める(読み終える)気がしない。だからせめて、もう少しよく知りたいと思った。

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