だれもが知ってる小さな国

著 者:有川浩
出版社:講談社
出版日:2015年10月27日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 タイトルを読んで「これって、もしかしたら..」と思った人は、子どものころにそれなりに豊かな読書体験を持った方が多いだろうと思う。そう本書は、佐藤さとるさんの「コロボックル物語」を有川浩さんが書き継いだものだ。

 主人公はヒコ。物語の初めには小学校の3年生だった。「はち屋(養蜂家)」の子ども。蜜が取れる花を追って、両親とともに九州から北海道までを移動しながら暮らしている。

 それぞれの土地で、巣箱を置く場所は決まっているので、毎年同じ学校に戻ることになる。1年前に転出した学校に今年は転入する。その年も北海道の同じ学校に転入した。ただし昨年と違うことがあった。もう一人転入生がいた。その女の子の名はヒメ。彼女も「はち屋」の子どもだった。

 「はち屋」の仕事が屋外の晴れの日に行われることが多いせいか、物語全体に陽光が差したような明るい雰囲気に包まれている。ヒコのところには、コロボックルのハリーが訪れ、二人は友達になる。

 物語はこの後、ヒコとヒメの二人の暮らしを微笑ましく綴る。ボーイ ミーツ ガール。いつもよりも少し年齢が低いけれど、ここは有川さんの真骨頂だ。「コロボックル物語」の世界観に、有川ワールドが溶け込んでいる。これは奇跡だ、と思う。

 この奇跡は、佐藤さとるさんと有川浩さんの対談によって生まれた。佐藤さんがこう言ったのだ「有川さん、書いてみたら」。有川さんはその言葉に見事に応えたと思う。巻末の佐藤さんによる「有川浩さんへの手紙」が、それを証明している。佐藤さんは(眼が悪いのに!)一気読みしたそうだ。

 そして有川さんの、佐藤さんと「コロボックル物語」へのリスペクトは、冒頭の二行に現れている(分かる人にしか分からないけれど)。「二十年近い前のことだから、もう昔といっていいかもしれない。ぼくはまだ小学校の三年生だった。

 二人の作家の世代を越えたエールの交換に拍手。

 この後は書評ではなく、この本を読んで思ったことを書いています。お付き合いいただける方はどうぞ

 佐藤さとるさんと有川浩さんの対談

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 ずいぶん前になりますが、今は大学生の娘が小学生の頃に、「だれも知らない小さな国」を図書館で借りたときのことです。司書の方が本を手渡しながら「昔は本が好きな子が、みんなこの本を読んだんですが、今はあまり借りられなくなってしまいました」と、おっしゃったんです。それはそれは寂しそうに。

 自分が読んで面白かったので、この本を娘に薦めて借りにきたところだったので、司書の方の寂しさが自分のことのように思えました。毎年たくさんの本が出版されるけれど、何世代も読み継がれるような本もあって欲しい。この本がそうであったらいいのに、と。

 そしてこの「だれもが知ってる小さな国」です。この本をきっかけに「コロボックル物語」に再び光が当たるんじゃないかと思っています。いや、そう願っています。

だれもが知ってる小さな国”についてのコメント(1)

  1. 粋な提案

    「だれもが知ってる小さな国」有川浩

    「有川さん、書いてみたら?」その一言で、奇跡は起きた。佐藤さとるが生み出し、300万人に愛された日本のファンタジーを、有川浩が書き継ぐ。
    ヒコは「はち屋」の子供。みつ蜂を養ってはちみつをとり、そのはちみつを売って暮らしている。お父さん、お母さん、そしてみつばちたちと一緒に、全国を転々とする小学生だ。あるとき採蜜を終えたヒコは、巣箱の置いてある草地から、車をとめた道へと向かっていた。
    ……

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