著 者:真保裕一
出版社:講談社
出版日:2013年2月12日 第1刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
「デパートへ行こう!」に続く「行こう!」シリーズの第2弾。シリーズと言っても物語につながりはなく、著者のインタビューなどによると「再生物語」であることだけが共通している。「デパートへ行こう!」では「家族の再生」、本書で描くのは「地域の再生」だ。
舞台は宮城県にある赤字ローカル線、森中町と原坂市を走る「もりはら鉄道(もり鉄)」。JRから移行した第三セクターで、年に2億円の赤字を出し「あとはいつ決断するか」と思われている。主人公は二人。ひとりは、鉄道の会長でもある森中町長に、社長としてスカウトされた篠宮亜佐美、31歳。もうひとりは、亜佐美と同年代で、「もり鉄」に副社長として、宮城県庁から送り込まれた職員の鵜沢哲夫。
亜佐美は、新幹線の車内販売で一人で一日50万円を売り上げる「カリスマアテンダント」だった。とはいえ会社経営の経験はなく、赤字鉄道会社への若くて未経験の女性の社長の大抜擢。話題性が抜群であるというプラス面はあるけれど、監査役の銀行からは「とんでもない人事」と言われ、確かに前途多難さを感じさせた。
物語は、電車の運行のように、快調に走り出したかと思うと、スピードダウン・停止、を繰り返す。亜佐美の手腕は、少なくとも企画力と人心掌握に関してはホンモノだった。「話題性」という武器をフル活用した、亜佐美の企画は次々と当たる。しかし、何かがうまく行くたびに、事件が起きる。最初は小さな出来事だったけれど、次第にエスカレートする。
面白かった。「うまく行きすぎ」なんだけれど、そんなことを言わずに楽しんで読めばいいと思う。国内に赤字ローカル線はたくさんあり、その共通の問題点はたぶん「乗る人が少ない→何かを削減→不便になる→乗る人が減る」の負のスパイラル。赤字解消にためには、この回転を逆に回す必要があるのだから、亜佐美ぐらいの馬力が必要だ。
「〇〇と似ている」という言い方は、双方に失礼なことを承知で言うと「有川浩さんの作品に似ている」。懸命に何かに取り組む人がいて、反発しながらも支える人がいて、ラブストーリーが織り込まれていて、ちょっとカッコいいオッサンがいる。そんな物語だった。私はこういうのが大好きです。
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