隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働

著 者:ルトガー・ブレグマン 訳:野中香方子
出版社:文藝春秋
出版日:2017年5月25日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 今年は「AI(人工知能)」についての理解を深めようと思っている。それで、今年の初めに「人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊」という本を読んだ。その本では、2045年には「全人口の1割分の仕事しかない」社会が予想される。仕事と収入がリンクする今の制度では、9割の人が路頭に迷う。

 この本を読んで、それまでは懐疑的だった「BI(ベーシックインカム)」について「これしかないんじゃないか」と思うようになった。ちなみに「BI」とは「全ての人に生活に必要なお金を支給する制度」だ。

 本書はその「AI」と「BI」を正面から論じ、「BI」こそが「AI」時代の処方箋だと論じる本だ。著者のルトガー・ブレグマンは、オランダの歴史家でジャーナリスト。広告収入に頼らないジャーナリストプラットフォーム「De Correspondent」の創立メンバー。帯には「ピケティにつぐ欧州の新しい知性の誕生」とある。

 第1章で「過去最大の繁栄の中、最大の不幸に悲しむのはなぜか?」と、疑問を提示したのち、第2章で「福祉はいらない、直接お金を与えればいい」と、早くも「BI」の実施に切り込む。その後の章では、「BI」の可能性、批判への反論を、実に丁寧に論じていく。

 例えば「BI」への批判の最たるものに「無条件にお金を配ったりしたら、誰も働かなくなる」というのがある。「誰も」が文字通りではなくても、働かない人が大多数になったら、商品を作ったりサービスを提供したりするする人が足りなくなっては、社会が成り立たない。

 これには胸に落ちる反論がされている。実は「BI」につながる実験的な取り組みは、過去何度が行われていて、そこで結論が出ている。「無条件にお金を与えられても、人は怠惰にならない」。古くは1795年のイギリスで、その後は、1974年のカナダで、2008年のウガンダで、2009年のロンドンで。インドでブラジルでメキシコで南アフリカで...。

 最後に。この反論を無意味にしてしまうのだけれど、実は「無条件にお金を配って、働かない人が大多数になっ」たとしても問題はないのだ。思い出して欲しい。「AI」の発展によって2045年には「全人口の1割分の仕事しかない」。だから、9割の人が働かなくなっても困らない。

 「AI」の社会への影響や「BI」に興味がある方に、本書を強くおススメする。 

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