一〇五歳、死ねないのも困るのよ

著 者:篠田桃紅
出版社:幻冬舎
出版日:2017年10月8日 第1刷 12月15日 第2刷 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 1913年(大正2年)生まれ、御年105歳で現役の美術家である、篠田桃紅さんのエッセイ。「水墨抽象画」という独特なスタイルの作品。その展覧会を見に行って「105歳でこの作品を描く人は、どんな人なんだろう?」と思って、ミュージアムショップで本書を購入した。

 4つの章に分けて全部で40本のエッセイを収録。第1章「歳と折れ合って生きる」、第2章「幸福な一生になりえる」、第3章は「やれるだけのことはやる」、第4章は「心の持ち方を見直す」。自分の道をひたすらに求めた105歳の口から出た言葉は、すべてが「人生訓」に聞こえる。

 心に留まった言葉をいくつか紹介する。第1章の2本目「楽観的に生きる」。「普段は、歳のことなど気にしていないのですが、なにかの拍子に、これはもうとんでもないことで、不思議な現象が起きている」。普段は歳のことを気にしてないのだ。そしてご自分でも「とんでもないこと」と思っていらっしゃる。

 第2章の1本目「生きていく力は授かっている」。「どこかで自分を肯定しているものがあるから、生きていかれるのだろうと思います。私はこういうことが、ほかの人よりうまくできる」「幸せになりえる人は、ないものねだりをしないのだと思います」。「今」を肯定することが上手にできるようになろう、と思う。

 第3章の6本目「この世に縁のない人はいる」。「いくら自分の考えを伝えても、理解してくれない人は必ずいます」。これはお釈迦様の教えにある「縁なき衆生は度し難し」について書いたもの。「どうして理解してくれないのだろう」と思い悩むことはないのだ。

 同じエッセイの中にこういう言葉も。「私の展覧会では、大抵の人はすーっと通って帰ります」。私は、すーっと通って帰ってしまう人の気持ちも分かる。桃紅さんの描いた絵は、寡黙で何も説明してくれない。とっかかりがない。それでもしばらく前に立って眺めて「あぁこれ何かいいな」とか、見ているこちらが思って初めて微笑を返してくる。そんな作品なのだ。

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2つのコメントが “一〇五歳、死ねないのも困るのよ”にありました

  1. レビ

    おひさしぶりです。

    昨日、本屋さんで、ちょっと、パラパラしました。
    気になっていたからですが
    このごろ、新刊は買ってないので、財布は開かないままでしたが。

    作品はまだ、観たことがないので
    展覧会を見る機会があれば、観たいです。

    大正2年に生まれて、現役なんて、考えられません!

    私も、最低、80までは働こうと思ってますが
    それよりもう20年以上も長いとは。

    すべてが人生訓に聞こえる…そうですね。
    で、今のところ、私もほぼ同じ考えですごしてます。
    100歳現役、いけるかも。

  2. YO-SHI

    レビさん。こちらこそご無沙汰しております。

    確か、レビさんは「和」の関係のお仕事をされてる、と記憶しています。
    (違ってたらゴメンナサイ)
    だから篠田桃紅さんの作品を前にすると、きっと何か感じるものがあると
    思います。「気になっていた」のも(勝手ですけど)分かる気がします。

    100歳現役、いけますよ、きっと。

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