日本史の内幕

書影

著 者:磯田道史
出版社:中央公論新社
出版日:2017年10月25日 初版 2018年2月15日 8版
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「歴史の愉しみ方」を読んで、他の本も読みたいと思った。たくさんある著書の中で新しいものをと思って、本書を手に取った。最新刊は「素顔の西郷隆盛」だけれど、西郷隆盛にはそんなに興味ないので、一つ前の近刊である本書にした。

 「古文書」という一次情報から知識を仕入れている、という自負・自信からか、著者の意気込みが激しい。「まえがき」に「古文書が読めない書き手が書いた歴史叙述は、結局、情報を、どこからかコピーして借りてこないといけないから、面白みがなくなってしまう」と容赦ない。「コピペとフィクションの歴史叙述が巷にあふれている」と、大方の歴史小説を「コピペ」扱いする。

 その意気込みは空回りせず、文章に現れている。読売新聞の連載等を収録した64編ものエッセイのほぼすべてに、その根拠となる古文書が示されている。著者自身が発掘したものもたくさんある。第1章「古文書発掘・遺跡も発掘」には、古文書との出会いが多く記されている。

 例えば「「世界遺産に」皇后くぎ付け」というエッセイではこんな具合。「「従五位下大膳亮幸宣」そう書かれた古文書が地べたの青いシートの上で売られている。びっくりした。最後の郡上藩主・青山幸宣に朝廷が官位を授けた証書、口宣案の現物ではないか。

 正直に言って、これがどれほどスゴイことなのか、私には分からないけれど、著者の興奮は十分に伝わってくる。そのことで、読んでいる私までちょっとワクワクする。

 一番心に残ったエッセイは「我々は「本が作った国」に生きている」。江戸時代の出版文化を俯瞰して、その充実ぶりを「世界を見渡しても類例がない」と評する。「養生訓」などがベストセラーになり、実学が庶民にまで広がった。日本人の高い基礎教養は、長い時間をかけて「本」が作り上げた、著者はそう言う。

 最後に。「歴史の愉しみ方」にも「震災の歴史に学ぶ」という章があったけれど、本書の最後も「災害から立ち上がる日本人」という、災害をテーマにした章だ。私たちは災害の多い国に生きている。それは歴史を紐解けば明らかだ。備えなければいけない。

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