未来のミライ

著 者:細田守
出版社:KADOKAWA
出版日:2018年6月25日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 この夏の細田守監督の最新作「未来のミライ」の原作小説。監督自身の書下ろし。

 映画の方は公開後2日間で観客動員29万5000人、興収4億円の大ヒット。ストーリーを紹介する必要があるのか、または紹介していいのか、疑問だけれど一応物語の初めのあたりを。

 主人公はくんちゃん。「訓」と書いて「くん」と読む。4歳。横浜の磯子の街で、建築士のお父さんと、総合出版社に勤めるお母さんと、ミニチュアダックスフントのゆっこ、と一緒に暮らしている。ある日、お父さんとお母さんに赤ちゃんが生まれ、くんちゃんの家に妹のミライちゃんがやって来た。

 お父さんとお母さんはミライちゃんの世話で、これまでのようにはくんちゃんには手をかけられない。くんちゃんは面白くない。ミライちゃんのことは「好きくない」。とうとう癇癪を起しておもちゃでミライちゃんをたたいてしまう。そんな毎日のある日、未来から中学生になったミライちゃんがやって来て..。

 私はこの物語はすごく好きだ。映画と同じように。4歳の男の子の成長を感じるし、お父さんとお母さんの愛情を感じるし、過去から続く命のバトンを感じるからだ。映画についての世間の評判を見ると、私に同意してくれない人もかなりの数いるようだけれど、まぁそれは仕方ない。

 映画と本との違いについても書いておく。ストーリーに違いはない。違うのは人物や場面の描写の細かさ。映画を三人称で描くことは難しいけれど、小説ならそれが容易にできる。登場人物が説明できないことも描くことができる。

 例えばお母さんについては「真面目で責任感が強い完璧主義者。(中略)裏を返せば神経質で、心配性で、ゆえに人の評価に敏感な性格だった」と描写されている。映画の画面からもその一端は伝わってきたけれど、ここまではっきりとは分からない。このお母さんがあのセリフを言うのだと思うと感じ方も違う。

 列車についてとか、エンジンなどのメカについてとか、お母さんの出身地の上田の街や、くんちゃんが自転車の練習をする根岸森林公園や、オートバイで走る磯子の街など、私には過剰に思えるくらい説明が詳しい。それで思った。この本の主人公はくんちゃんではなく、語り手つまり細田監督自身なんじゃないかと。

 細田作品の映画を、隣にいる監督の解説を聞きながら観る。そんな疑似体験が(時にうっとおしく感じるかもしれないけれど)できる。

映画「未来のミライ」公式サイト

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