ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ

著 者:辻村深月
出版社:講談社
出版日:2009年9月14日 第1刷 11月6日 第3刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「ハケンアニメ」「東京會舘とわたし」「かがみの孤城」と、最近の作品に連続して☆5つ。それで「私は辻村さんの作品が大好きなのだ」と気が付いた。その辻村さんの2009年の作品。

 二部構成。第一部の主人公は神宮司みずほ。30歳。山梨県甲州市出身。29歳の時に結婚し、今は東京に住んでいる。職業はライター。雑誌に記事を書いている。母親を殺して逃走中(という疑いをかけられている)の、幼馴染の望月チエミの行方を捜している。そして第二部の主人公がその逃走中の望月チエミ、という趣向。

 第一部でみずほは、かつての同級生、遊び仲間たちを順に訪ねる。チエミの行方につながるような情報を聞き出すために。最近会ったのはいつか?とか、その時はどんな様子だったか?とか、その他に何か知っていることはないか?とか、そんなことを聞いて回る。

 聞き出せた情報は、それぞれは他愛もないものだけれど、みずほはチエミと事件の真相に近づいて行った。読者もその気になれば、みずほと一緒に謎解きができる、というミステリー作品に仕上がっている。

 ただ、この物語はミステリー以外の要素も色濃い。久しぶりに会う同級生たちとのやり取りや、差し挟まれる回想によって、様々なことが徐々に形づくられる。中学まで同じ学校に通って、高校で進路が別れたみずほとチエミの関係性。地元に残った遊び友達たちと、東京に出たみずほの間にあるすき間。みずほと実家の母親が抱える過去..。

 こうして、形づくられるのはザラザラとした手触りの悪いものだった。著者自身が山梨県出身でライターではないけれど文筆業ではあるので、なんとなくみずほと重ねて見てしまう。そうした時に「これ、大丈夫なのかな」と心配になるぐらい、ザラザラしている。

 分量的には第一部が約4分の3。第二部は、第一部の答え合わせであり、結末でもある。この第二部によって、ザラザラしたものも、きれいに「洗い流す」とはいかないけれど、そういうものを「乗り越える」ことはできた。

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