PTAのトリセツ~保護者と校長の奮闘記~

著 者:今関明子 福本靖
出版社:世論社
出版日:2019年5月9日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 読み終わって「あぁこれが「答え」だったんだ!」と思った本。

 本書は神戸市の中学校で実際に成し遂げた「PTA改革」を、当時のPTA会長と校長先生が、それぞれの立場から記した報告。

 改革前。学級のPTA役員決めは、形ばかりの立候補を募るも応じた人はゼロ。くじ引きで欠席者は代理が引いて決定。欠席者には会長ら本部役員が、引き受けてもらうための電話連絡をする。(この電話で辞退理由の壮絶な話を聞くこともあるし、この電話を受けないために、この日の夕食は外食にする作戦という人もいるらしい)

 「この日さえ乗り越えたら..」。それぐらい役員決めの日は重苦しい。子を持つ親の多くが覚えがある。私にもそんな経験がある。(私の場合は見事に引き当ててしまったのだけれど)。保護者の態度がこんなにネガティブなのは、その後のPTA活動が、負担感ばかりが大きくて意義が感じられないからだ。

 改革後。つまり1年後には、新1年生から3年生まで学級委員のすべてが立候補で決まる。毎月1回の運営員会は回を重ねるごとに参加者が増える。パートの昼休みに抜けて来る人までいる。ほとんどの役員が都合をつけて参加するようになる。その場で話し合われたことで、数々のことが実現していく。

 改革前と改革後の間で何が行われたかは、ぜひ読んで欲しいので、詳しくは書かない。書いても要約では大切なことが伝わらないと思うからだ。ひとことで言うと「負担感ばかりが大きくて意義が感じられない」を変えた、ということだ。事業を取捨選択すると同時に必要な負担をあらかじめ明確にして「負担感を軽減」する。PTAの意見を結果に結びつけることで「意義が感じられる」ようにする。

 PTAに関する新聞や雑誌、ウェブメディアなどの記事をよく目にする。それらに共通なのは、問題点の指摘に重きが置かれていることだ。中には「あるべき姿」を描くものもあるけれど、あくまでも理想で、その理想を実現することの困難さが合わせて書いてあることが多いように思う。

 しかし、PTAが「子どもたちのため」という本来の意義に立ち返るために必要なのは、そういった議論ではなく(もちろん不要論なんて論外)、どうすればうまく行くのか?が分かる「答え」、つまり「実際に成功した例」だったんじゃないか、と思う。冒頭に書いた「あぁこれが「答え」だったんだ」というのは、そういう意味だ。ちなみに、日本PTA全国協議会のサイトによると、昭和40年代には早くも「PTA廃止論」が出ているそうだ。本書の「答え」は、50年もの間待ち望んだ「答え」かもしれない。

 もちろん同じことをやって同じようにうまく行くとは限らない。そういう意味では「答えの例」かもしれない。でも、一つの成功例があれば、次の成功例を実現するのは比較的容易だ。これからが楽しみだ。

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