京大変人講座

著 者:酒井敏、小木曽哲、山内裕、那須耕介、川上浩司、神川 龍馬
出版社:三笠書房
出版日:2019年5月1日 第1刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「変人」と言うからどんなに変なのか?と思ったら、意外にも真っ当な話だったな、と感じた本。

 本書は、京都大学で2017年の5月から不定期に開催されている、一般開放の講座「京大変人講座」の7回目までをまとめたもの。この講座は今も続いていて、現在は7月にある第13回「文学でしか伝えられないことがある」の参加者を募集している。キャッチコピーは「京大では「変人」はホメ言葉です」

 全部で6章あって、1章ずつ6人の先生が自分の研究について執筆。章のタイトルを紹介する。「毒ガスに満ちた「奇妙な惑星」へようこそ」「なぜ鮨屋のおやじは怒っているのか」「人間は”おおざっぱ”がちょうどいい」「なぜ、遠足のおやつは”300円以内”なのか」「ズルい生き物、ヘンな生き物」「「ぼちぼち」という最強の生存戦略」

 1つだけ紹介。第4章「なぜ、遠足のおやつは”300円以内”なのか」。タイトルの関連から言うと、子どもたちは、300円という制約があることで、どのお菓子にしようか悩む「楽しさ」を味わえる。制約は「不便」だけれど、不便さには、ものの価値を上げ、モチベーションを上げる性質がある。

 この章の担当の川上先生の研究は「不便益=不便によってもたらされる利益」。不便だからこそいいこと、うれしいこと、を探すことをライフワークにしている。先生の専門はシステム工学で、様々なものの「便利で効率的」なあり方を研究されるのが一般的だと思う。それなのに不便なものを探している。紛れもなく変人である。

 変人だけれどふざけているわけではない。研究は筋の通ったものだし、社会への還元もある。いまや全国大会が開催される「ビブリオバトル」は、インターネット時代の「いつでも、どこでも、誰とでも」を裏返した「今だけ、ここだけ、僕らだけ」をスローガンに、先生の研究室の研究員が発案したものらしい。

 冒頭に「どんなに変なのか?と思ったら、意外にも真っ当」と、ネガティブな評価とも受け取れる書き方をしたけれど、そういうことでは決してない。「京大変人講座」の発起人の酒井先生が、こうおっしゃっている「目に見えてブッ飛んだ変人というのは”普通”をひどく意識しているものです」「あくまでも「ちょっと変」が重要」。私の「意外にも真っ当」は「ちょっと変」の言い換えだ。

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