シヴェルニーの食卓

書影

著 者:原田マハ
出版社:集英社
出版日:2013年3月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 高名な画家の葛藤や喜びなどの想いを感じた本。

 アンリ・マティス、エドガー・ドガ、ポール・セザンヌ、クロード・モネ。「印象派」に属する西洋絵画の巨匠4人、それぞれの絵画への姿勢が垣間見られる4つの短編を収録。

 4つの短編を簡単に。マティスの最晩年を、家政婦として仕えたマリアの回想の形で描く「美しい墓」。ドガがモデルとした踊り子とのエピソードを、同じ画家として理解者であったメアリーを主人公として描いた「エトワール」。セザンヌの創作活動や身辺の出来事を、印象派の画家たちの理解者であった「タンギー爺さん」の娘が、セザンヌに宛てて書いた手紙で表現した「タンギー爺さん」。そしてモネを描いた表題作「シヴェルニーの食卓」

 1作だけ選ぶとしたら「シヴェルニーの食卓」。モネの半生をその義理の娘のブランシュの視点で描く。ブランシュはモネが若い頃を支えたパトロンの家の娘で、曲折があって義理の娘となり、今はモネの公私とものマネージメントを仕切っている。

 物語は、時代を行き来しながらその「曲折」を描く。ブランシュの「義理の娘となり」をいささか下世話に言い換えると「画家がパトロンの奥さんと仲良くなって再婚した」ということ。小説家に話したらすぐに小説のモデルにしそうだ、作品中にもそう書かれている。(著者はこうして小説にしたわけで、ここはシニカルな味付けを感じた)

 すべての作品に共通するのは、画家の側にいた女性の視点が生かされていること。その視点は実に細やかに画家の内面までを見つめている。表題作が特に顕著なのだけれど、画家との出会いはその女性の人生にも大きく影響し、女性自身の内面にも波紋が広がる。画家と、その側の女性と、2つの内面が織りなす模様が絵画のように美しい(ちょっとカッコつけすぎか)。

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