一日一生

著 者:酒井雄哉
出版社:朝日新聞出版
出版日:2008年10月30日 第1刷 2019年3月30日 第33刷
評 価:☆☆☆(説明)

 自分は「まだまだだ」と思った本。

 2008年の本が再び注目されているのは、冤罪で長期勾留された元厚生労働省事務次官の村木厚子さんが、今年の1月にテレビの番組で「この本に救われました」と紹介したから。帯にもそう書いてあるのを見て読んでみようと思った。

 著者は酒井雄哉師。僧界の最高位である大僧正にして、荒行である千日回峰行を満行した大行満大阿闍梨となる。しかも千日回峰行を2回も満行。これは千年を超える比叡山の歴史で3人しかいないらしい。

 タイトルの「一日一生」は、「今日の自分は今日でおしまい。明日はまた新しい自分が生まれてくる」ということ。だから今日失敗したからって落ち込むことはない。今、自分がやっていることを一生懸命に忠実にやることが一番。

 「自分はまだまだだ」と思うのは「一日一生」が心に沁みないからだ。「明日はまた新しい自分」なんて、「Tommorow is another day」のスカーレット・オハラみたいだと、余計な事を思って、その言わんとすることがスッと入って来ない。

 念のため言うと、私も一応頭では分かっている(つもり)だ。著者は「繰り返し」について何度も言及している。それは7年かけて4万キロを歩く千日回峰行から得たことだと思う。4万キロを思うと途方もないけれど、一歩一歩右足と左足を交互に出すことに集中することで達成に近づく。7年も一日一日の繰り返し。村木さんは一日ずつ気をしっかりと持って164日間の勾留を耐えた。

 自分はまだまだだ。「一日一生」が心に沁みるには修練が足りない。でもたぶんそれも喜ぶべきことなのだろう。
 

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