ロウソクの科学

著 者:ファラデー 訳:竹内敬人
出版社:岩波書店
出版日:2010年9月16日 初版
評 価:☆☆☆(説明)

 これを読んで科学に目覚める人がいる、ということがよく分かった本。同時に自分が読んでいたらどうだったか?は少し疑問。

 ノーベル化学賞が決まった吉野彰さんが、化学に興味を持つきっかけになったのが、小学校4年生の時に先生が薦めてくれたこの本だった、とおっしゃっていたので読んでみた。

 「訳者前書きに代えて」に本書の経緯が書いてある。本書はファラデーが行った「青少年のためのクリスマス講演」の講義録。クリスマス講演は、ファラデーが英国の王立研究所の所長に就任後、1826年に始めた企画で、それはなんと今日まで続いている。そして本書の元になっているのは1860年の講演。

 「ロウソクに火をつけると燃える」。しごく当たり前のことだけれど「それはどうしてか?」という問いを建てることで、科学への入口の扉が開く。

 燃えているロウソクをよく観察すると、ロウソクの先はお椀のようになって、中に溶けたロウソクが液体として溜まっている。その液体が「毛管引力(今で言う表面張力)」で芯を上る。上昇したロウの成分は熱せられて気化し、炭素と水素に分解され、それぞれが空気中の酸素と結びついて、二酸化炭素と水が生成される。ロウソクが燃えて明るいのは炭素が燃えて光るからだ。

 このことを、(1860年の)青少年に分かるように、たくさんの実験を時間をかけて(おそよ4回分の講演を費やして)説明する。ちなみに最初の「お椀のようになって..」の「お椀がどうしてできるのか?」も、炎が起こす上昇気流で説明している。徹底的に「それはどうしてか?」を追求する。だからとても時間がかかる。でもとても楽しくワクワクする。

 「文献・資料」に書かれていて気がついたけれど、本書で行われた実験の多くは、今の小学校・中学校・高校の理科や化学の授業で取り上げられている。科学の世界は日進月歩だけれど、160年前から変わらないこともある。そのことに敬意と信頼を感じる。

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