山本太郎 闘いの原点:ひとり舞台

著 者:山本太郎
出版社:筑摩書房
出版日:2016年6月10日 第1刷 2019年8月10日 第2刷 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 友人が「読んでみて」と何冊か渡してくれた「山本太郎本」の一冊。

 「政治家の「自分語り」なんてロクなもんじゃない」と思っていたけれど、そんなことなかった本。

 本書の元は2012年2月に集英社から出版された単行本。これを加筆修正、特に「文庫版まえがき」「文庫版序章」「文庫版最終章」を加えて文庫本化した。単行本の出版時期としては、2011年の東日本大震災後の反原発の活動開始後で、2012年12月の衆議院議員立候補より前。だからタイトル中の「闘い」とは、現在の政治家としての「反貧困」を含めた闘争ではなく、主に「反原発」の闘いのこと。ただし「反貧困」を含めて「原点」は同じであることは読めば分かる。

 その「原点」を明らかにするために、本書はまずは、反原発の活動の始点となった「高円寺デモ」、大きく報じられた「佐賀県庁への”突入”」について、その真相などを描く。その後に時代を遡って著者の生い立ちを描き始める。著者が「鬼軍曹」と評する母親から受けた教育、「元気が出るテレビ」での芸能界へのデビュー、井筒和幸監督、深作欣二監督らとの出会いと交流など。

 「原点」と言っても一つではなく複数あるのだろう。読んですぐに分かる「原点」は「母親の教育」だ。「高円寺デモ」のエピソードで目を瞠った。デモには遅れて途中から参加した。家を出る前に母親と揉めたからだ。止められたのではなく「自分も行く」と言い出して、「今日は家にいといてくれ」「いや行く」という押し問答をしていたからだ。

 目を瞠る出来事はまだ続く。母親は「貧しいフィリピンの子供の里親になるボランティア団体」に入って、何人かの里親になっていた。小学生の著者もフィリピンに何度か連れていかれ、裸電球が1個しかないような家で、1か月ぐらい過ごしている。「すべての弱い立場の人には手を差し伸べる」という考えを身につけさせるためだ。

 れいわ新選組が掲げる政策は、人気取りのパフォーマンスではないのはもちろんだけれど、もしかしたら「政策」でさえないのかも。そういう表層にあるものではなくて、太郎さんという人間の芯にあるものなのかもしれない。

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