青くて痛くて脆い

著 者:住野よる
出版社:KADOKWA
出版日:2020年6月25日 初版 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 「大事なことは言葉で伝えよう」そう思った本。

 著者の作品を読むのはデビュー作「君の膵臓をたべたい」、第2作「また、同じ夢を見ていた」に続いて3作品目。前者は300万部、後者も40万部を突破で、デビュー即ベストセラー作家の仲間入り。本書も50万部突破だそうで、8月28日には吉沢亮さん、杉咲花さんのダブル主演の映画が公開される。

 本書の主人公は田端楓、物語の始まりの時には大学1年生。男子。「人に不用意に近づきすぎないこと」「誰かの意見に反する意見は出来るだけ口に出さないこと」を、人生におけるテーマとして決めつけていた。他人との関りを避けて、面倒なことを避けて、誰かから傷つけられることを避けて..

 楓がキャンパスで出会ったのは、楓とはおよそ正反対の性格の秋好寿乃。退屈な授業で、大きな声で発言を求め意見表明のような質問をして、周囲から「なにあれ」「痛った」と言われる。食堂で一人で定食を食べていた楓の横に来て、いきなり話しかけて突然の自己紹介。そうして出会った二人がサークル「秘密結社モアイ」をつくる。モアイの信念は「四年間で、なりたい自分になる」

 こんなに詳しく説明したけれど、ここまででわずか29ページ。そのページの最後には「あの時笑った秋好はもうこの世界にはいないけど」と書いてある。そしてページをめくると、楓はリクルートスーツを着た就活生になっている。モアイは楓たちが作ったものとは、似ても似つかない就活サークルに変容していた。

 青いです。痛いです。脆いです。このあと、楓は寿乃から託された言葉を胸に、モアイを奪還しようと奔走する。それはまぁ親友の意志を継ぐ「美しい物語」なのだけれど、私には「青臭い正義」に感じる。独りよがりで傍から見ていて「痛々しい」。寿乃に何があったのかもやがてあきらかになるが、楓は傷ついて「脆さ」が露呈する。

 もちろん「青さ」も「痛さ」も「脆さ」も、タイトルにしているのだから著者の狙いに違いない。そして狙い通りだ。素直な心で受け止めれば、震えるほど切ない物語だと思う。私はもう心がひねくれてしまったようだけれど。

映画「青くて痛くて脆い」公式サイト

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