14歳の教室 どう読みどう生きるか

著 者:若松英輔
出版社:NHK出版
出版日:2020年7月25日 第1刷 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 14歳に必要なものが57歳になっても必要なのだ、と思った本。

 著者紹介によると、著者は批評家、随筆家で、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。本書は著者が筑波大学附属中学校の三年生に対して、90分の講義を7回にわって行った授業を書籍化したもの。タイトルの「14歳の教室」は、一つにはそのことを表している。

 どんな授業だったのか?1回の講義が1つの章になっていて、各章には名前がついている。「おもう」「考える」「分かる」「読むと書く1」「読むと書く2」「対話する1」「対話する2」。何かの知識や正解を教えるのではなくて、自分で深く考えることを促す授業だったようだ。

 読み進めていくと「言葉をとても大切に扱う人だなぁ」という思いが深まる。私は実はこのブログでも「思う」と「想う」を使い分けているのだけれど、著者はひらがなで「おもう」と書くのも含めて「懐う」「恋う」「念う」「惟う」など何種類もの「おもう」を紹介している。

 これは、漢字の読みをたくさん覚えるという勉強ではなく、ましてや言葉遊びでもない。「おもう」という日常に使う言葉でも、その意味するところは多様だということ、今私が使った(あの人が使った)「おもう」は、どういう「おもう」だろうと考えることを促している。「言葉の解像度」を高めていく、と言い換えられるかもしれない。

 印象に残った言葉を2つ。

 「説明」はしばしば一面的で表層的なものです(中略)。言葉にならないものを見過ごしていることがあるかもしれない。それだけでなく、聞いている人の「手応え」を無視するような「説明」も世の中には多くあります。

 「読む」と「書く」は、言葉を呼吸することなのです。吸ってばかりでも、吐いてばかりでもいけません。「吸う」は「読む」です。「吐く」が「書く」です。

 著者自身の言及もあるけれど、本書のタイトルは池田晶子さんの名著「14歳からの哲学 考えるための教科書」へのオマージュの意味もある。

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