保健室のアン・ウニョン先生

著 者:チョン・セラン 訳:斎藤真理子
出版社:亜紀書房
出版日:2020年3月26日 第1版第1刷 6月11日 第2刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 もしかしたら新しいジャンルを見つけたんじゃないの?と思った本。

 タイトルどおり、主人公はアン・ウニョン先生。韓国の私立M高校の養護教諭。ウニョン先生には特別な能力、それに伴う使命がある。普通の人には見えないものが見える。それは、家の壁の中で静かに笑うおばさんだったり、生徒たちが振りまくエッチな妄想が形になったものだったり。中には人に悪さを働く危険なものもある。ウニョン先生はそういったものを、プラスチックの剣とBB弾の銃で退治している。本書は、ウニョン先生が活躍する長さが様々な短編10編を収録。

 最初の「大好きだよ、ジェリーフィッシュ」は、ウニョン先生がこの学校で活躍する最初の事件。実はこの学校の校舎は、地下3階まであるのに、地下1回のごく一部を倉庫として使っているだけで、それより下は使っていない。鉄の鎖で封印してある。

 ウニョン先生が守衛に言って地下に入ると、卒業生たちが捨てていった暴力や競争心、不名誉や羞恥が形になった、汚い「ぐにゃぐにゃ」が転がっていた。さらに下の階へ進むと...大混乱の末に最後はグラウンドが丸ごと弾けて学校の外へ飛んでいく爆発。なかなかのスペクタクルが展開される。

 ワクワクしながらおもしろく読んだ。本好きの知人の話で知った作品なのだけれど、新しい扉が開いた感じがした。

 韓国の現代を舞台とした本を読むのは初めてだ。欧米を舞台とした物語は、古代から現代まで数多く読んだけれど、「お隣の国の現代」という、時間的空間的にいわば私と一番近い物語を読むことが、これまで1回もなかったのはどうしてだろう?と考えた。(「近くて遠い」そんな言葉しか浮かばなかったけど)

 近いが故に、日本と比べてしまう。そして、比べても違いをほとんど見いださないことに、改めて驚く。韓国の高校生たちは、日本の高校生と変わりない。保守系の教科書のゴリ押しに先生が抵抗する場面があって、そっくりそのまま日本のがっこうを舞台に移しても行けるんじゃないのか?と思った。

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