武蔵(一)

著 者:花村萬月
出版社:徳間書店
出版日:2011年9月
評 価:☆☆(説明)

 これは..思ってたのと違うな、と思った本。

 「時代小説を読みたいな」と思っていたら視界に入ってきて、読んでみた。紹介するまでもないけれど、主人公は宮本武蔵。ただし本書は6巻シリーズの第1巻で、武蔵はまだ11歳で名を弁之助といっていた。十手術の創始者で道場を構える養父と暮らしている。

 弁之助は日々鍛錬を怠らないだけでなく、膂力も人並みはずれてあった。「大きく、なりたい」と思っていた。背丈はもちろん、自分でもよくわからないけれど「対峙する相手を圧倒」する大きなものがほしいと思っていた。そして養父の脳天を断ち割ることを夢想していた...

 いや、もう困った子どもだ。冒頭のエピソードでは、野良犬の脳天を断ち割ってしまっている。養父でないだけまし、という話ではない。困った子どもだ。

 この後、弁之助は5つ年上の美禰という神官の娘や、養父の門弟で豪族の跡取り然茂ノ介らと出会い、行動を共にするようになる。そして「武者修行」と称して出奔を企てて、3人で山に分け入ったりもする。

 10代の子ども3人が、親の束縛を逃れて道なき道を行く。ジュブナイル小説の様相で、まぁそういう読み方もできるのだけれど、やっぱり困ったことがある。美禰を筆頭にして、あっちにもこっちにも色っぽいお姉さんが居て、弁之助とセックスをしてしまう。

 というわけで、「ポリコレ」とか言わないけれど、居心地の悪い思いをしながら読み終わった。奥付の前を見ると、本書は「問題小説」という月刊誌に掲載された作品だそうで、雑誌のキャッチコピーが「男のためのセンセーショナル小説集」。「男のための..」が安っぽすぎると思うけれど、まぁそういう狙いなのか、と腑に落ちた。

 武蔵の人生は始まったばかりで、これから先に波乱万丈の物語がある。武蔵が大人になれば、居心地の悪さも薄れて楽しめるだろう。でもなぁ。

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