スタッキング可能

著 者:松田青子
出版社:河出書房新社
出版日:2013年1月30日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「なんだこれ?」から「へぇ~面白いじゃん」となった本。

 スマホに登録してある「読みたい本」リストに、書名ではなくて著者の名前が書いてあった。何をきっかけにこれを書いたのが思い出せない。とりあえずデビュー作を読んでみた。

 全部で6編を収録。表題作「スタッキング可能」と「もうすぐ結婚する女」は、それぞれ90ページと40ページほどの中編。そのほかの4編「マーガレットは植える」「ウォータープルーフ嘘ばっかり!」「ウォータープルーフ嘘ばっかり!」「ウォータープルーフ嘘ばっかりじゃない!」は、10~20ページほどの掌編。

 「スタッキング可能」はどこかのオフィスビルが舞台らしい。節の切り替わりにエレベーターの階数表示の図があって、5階とか6階とかの数字が示されている。その階で交わされる会社員たちの会話で物語が構成されている。

 読み始めてから時間を置かずに混乱しはじめた。

 会話の多くは男性社員の女性に対する、あるいは反対に女性社員の男性に対する、どちらにしてもしょーもない話だ。登場人物はA田やB野やC川とかの記号で表される。匿名性が高いので、誰の発言か気にしないで最初は読んでいたけれど、ある時に気が付いた。「B山って書いてあるけど、このことを言ってたのはB田のはず」

 もちろん校正ミスなどではなくて、他でも同じように辻褄が合わないことがある。どういうことなの、これ?...そうか、だからスタッキング可能なのか。

 面白かった。著者にはおそらく「普通」の押し付けに対する強い違和感があって、それはほかの収録作品にも感じられた。もう一つ特長をあげると、言葉のリズムとか音の表現がとても心地よかった。...マーガレット・ハウエル。

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