君の膵臓をたべたい

書影

著 者:住野よる
出版社:双葉社
出版日:2015年6月21日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 今年の本屋大賞第2位。公式Twitterによると55万部突破だそうだ。トーハンの調べで2016年上半期ベストセラー「単行本・文芸書」で第2位(ちなみに第1位は「羊と鋼の森」。本屋大賞の効果は抜群だ)。とにかく売れている本。

 主人公は高校2年生の「僕」。「僕」はクラスメイトの山内桜良が、余命数年の病に侵されていることを知る。そして読者は、桜良が亡くなってしまうことを、物語の冒頭の1行目で知らされる。物語は「僕」が桜良の秘密を知ってから、彼女が亡くなるまでの二人の交流を描く。

 浅いようで深い、深いようで浅い、そんな物語だった。桜良が余命数年とは思えない溌剌さで、自分の病気もジョークにしてしまう。おみくじで「病、やがて治る」とあったのに対して「治んねぇっつうの!」と悪態をつく。浅いと言うかノリが軽いのだけれど、桜良の心の中までは覗けない。そこには深い淵があるのかもしれない。

 「深いようで浅い」と感じたのは「構成」について。エピソードをもう少し積み重ねて欲しかった。詳しくは書かないけれど、さまざまな思わせぶり(私が勝手に思っているだけだけれど)な出来事が起きるのだけれど、ただ流れて行ってしまったように思う。

 そうそう「僕」にはちゃんと名前はあるのだけれど、【秘密を知ってるクラスメイト】くんとか、【根暗そうなクラスメイト】くんとか書かれている。その時々の相手が、自分をどう思っているかを「僕」が推し量った言葉のようだ。ちょっと面白い仕掛けではある。

 最後に。これまでにも何度か書いているけれど、私は「死」と「感動」を結びつける物語が好きじゃない。「読後、きっとこのタイトルに涙する」「ラスト40ページは涙涙涙」という、本書の帯の惹句もちょっとイヤだ。これがなければ泣けたかもしれない。

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