著 者:村山早紀
出版社:ポプラ社
出版日:2015年3月12日 第1刷 発行
評 価:☆☆☆(説明)
著者の作品を読むのは、「桜風堂ものがたり」とその姉妹作「百貨の魔法」に続いて3作品目。「あとがき」で知ったのだけれど、著者は児童文学の作家さんとして長い経歴をお持ちだった。本書は、主に中高生向けのポプラ社ピュアフル文庫の、「コンビニたそがれ堂」シリーズの中から短編4編を選び、書下ろし1編を加えた「愛蔵版」として出版されたもの。
主人公は短編ごとに様々。人間の家族に愛されて育った猫、引きこもり中の十七歳の少女、お隣のお兄ちゃんが好きな小学校6年生、幼いころにクリスマスイブの秘密の思い出があるおじいちゃん、過去に不思議な経験をした病院の院長先生。バラバラな主人公たちに、ひとつだけ共通することがある。「大事な探しもの」がある、ということ。
物語の主な舞台となるのは、風早の街の商店街のはずれにあるコンビニ「たそがれ堂」。いつでも誰でも行けるわけではなくて、夕暮れ時に、大事な探しものがある人だけに、その姿を現す。世界中のものが何でもある。探しているものがあれば必ず見つかる。そんな不思議なお店。店長は神様だという人も..。
哀しいお話の中でほんのりと温かい物語だった。物語のいくつかは寒い日で、コンビニの暖かさが凍えた体に心地いい、という設定なのだけれど、ちょうどそんな感じの温かさ。「大事な探しもの」というのは、心の中ので欠けているものを埋めるものであることが多い。そこには必ず哀しい事情がある。
「あとがき」は「創作メモ」でもあって、各編の解説、執筆時の気持ち、その作品への想いなどが、著者自身の言葉で書かれている。実は、冒頭にあげた私がこれまでに読んだ2作品も「風早の街」を舞台にしたもので、どうやら著者はずっとこの架空の街を舞台に作品を描いてきたらしい。他の作品、他のシリーズも読みたい。
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