著 者:海堂尊
出版社:宝島社
出版日:2010年9月24日 第1刷 10月14日 第2刷 発行
評 価:☆☆☆(説明)
シリーズの他の作品と比べて、いつになく剣呑な雰囲気にドギマギした本。
「チーム・バチスタの栄光」から始まる「田口・白鳥シリーズ(著者は「東城大学シリーズ」としているそうだ)」の第5作。実は先に第6作の「ケルベロスの肖像」を読んでしまっていて、後戻りして読んだ。
主人公は、東城大学医学部付属病院の講師田口公平。「不定愁訴外来(通称愚痴外来)」の責任者。院内ではヒマだと思われている。ただし、病院長のムチャ振りで「院内リスクマネジメント委員会」の委員長や、厚労省の検討会の委員などを兼務している。そして今回は新設の「Aiセンター長」にも就任。ちなみに「Ai」とは「Autopsy Imaging」で「死亡時画像診断」の意味。このシリーズのテーマの一つでもある。
「Aiセンター」はまだ建設中。どういうわけか警察関係には「Ai」に対して強い反対勢力があるらし。人事にも介入されて、副センター長に警察庁の元刑事局長が送りこまれたり、オブザーバーに現役の警視が入ったりする。物語を通して、この二人が何とも剣呑な雰囲気を漂わせ、終盤に向けて危険さを増していく。
病院が舞台なので、これまでにも「死」はあったけれど、今回は殺人事件がらみ。そして、東城大学医学部付属病院の崩壊の危機。本当に「崖っぷち」な感じだった。主人公は田口センセイだとしても、厚労省の白鳥技官の活躍が目覚ましい。いつもは議論を引っ掻き回して混乱させる役回りだけれど、今回は論理的な推理が冴える。
「ジェネラル・ルージュの伝説」のレビュー記事で紹介したけれど、著者の作品は広大な物語世界を構成している。本書にも他の作品からのリンクが多数ある。まだ読んでいないシリーズも読みたくなった。
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