ツナグ 想い人の心得

書影

著 者:辻村深月
出版社:新潮社
出版日:2019年10月20日
評 価:☆☆☆☆(説明)

 死してなお絆が結ばれている。そんな関係もあるのだなぁ、と思った本。

 ベストセラー作「ツナグ」の続編。「ツナグ」は、2011年に吉川英治新人賞を受賞し、翌年には映画化もされた。この世に生きている私たちに死者を引き合わせることができる「使者(ツナグ)」と、死者との面会を依頼してくる人々を巡る物語。連作短編。

 今回、使者に死者との面会を依頼してきて会ったのは5人。親しい女性を亡くなった親友に会わせたいという役者。郷土の戦国武将と会いたいという歴史研究者。幼くして亡くなった娘に会いたいという母親。ガンで亡くなった娘との面会を求めた母親。板前の修業時代に慕っていたお嬢様に会いたい料亭のオーナー。

 前作の終わりで、渋谷歩美という男子高校生が使者を先代から引き継いでいる。帯には「使者・歩美の、あれから7年後とは-。」とある。それなのに冒頭の1編「プロポーズの心得」で、使者を務める小学生の少女が登場して戸惑う。あれ?この子だれ?新しい使者?。

 少女が誰であるかは後に分かる。なぜこの子が登場したのかの理由とともに分かる。そして読み終わってみると、この子の登場は続編としての本書の特長を象徴しているように感じる。

 その特長とは「(暗黙の)決まり事を破る」ということ。前作からの続きで言えば「使者は歩美」が決まり事なのに、知らない少女が出てきた。他にもある。「依頼者が死者と会うちょっといい話」が決まり事。でも「誰も死者に会わない」短編もあった。使者として以外の歩美の生活にフォーカスしたのも新しい基軸になっている。

 この「決まり事を破る」ことが、最終的には違和感や落胆にではなく、マンネリを防いで物語の厚みと期待につながっている。「続編」のあるべき姿を見るようだ。

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