著 者:本多孝好
出版社:角川書店
出版日:2017年6月29日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
デジタルデータの何を遺して何を遺さないのか?自分のいつか来る日のことを考えた本。
著者の本多孝好さんの作品は、「Story Seller」「Story Seller2」などのアンソロジーの短編でしか読んでいないのだけれど、「いつかは長編を」と思っていた。そこで比較的近刊の本書を手に取ってみた。
主人公は真柴祐太郎、20半ば。坂上圭司が経営する「dele.LIFE(ディーリー・ドット・ライフ」)」という会社の新入り社員。「dele.LIFE」は「死後、誰にも見られたくないデータを、その人に代わってデジタルデバイスから削除する」という仕事をしている。依頼人が設定した「PCが5日間か操作されなかったら」などの条件で、「dele.LIFE」のPCに信号が送られてくる。
条件が成立しても、依頼人が亡くなったかどうかは分からない。そこで、信号を受けたら依頼人の死亡を確認する必要がある。その確認作業が祐太郎の主な仕事だ。条件は依頼人自身が設定したのだから、確認しなくてもいいようなものだし、そのようにアプリで自動的に削除されると思っている依頼人もいる。しかしそこを確認を疎かにしないのが圭司の矜持のようなものだ。
死亡の確認では遺族に会ってすることが多い。祐太郎はそこで依頼人の人生に触れて考える。削除してほしいデータとは何だったんだろうか?それはもしかしたら遺族にとっては大切なものなんじゃないか?いくつもの依頼が登場するけれど、祐太郎は「本当にデータを消すの?」と、圭司に毎回問いかける。その問いかけは、残された人の癒しや救済につながることもある。
「死後、消してほしいデータ」に、こんなにバリエーションがあるとは思わなかった。祐太郎がそうであったように、すぐには「エロいの」とか「エグい」のとかしか思い浮かばない。しかし後に残す人のために、自分で守ってきた秘密を守り通すための削除もあるのだ。あるいは、削除されることが何らかのメッセージになることも..。
祐太郎にも圭司にも、それぞれに抱えた事情がある。その一端は見えるのだけど、まだまだ深いことがありそうだ。と思ったら、既刊3冊のシリーズになっていた。続きも読みたい。
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