悩むなら、旅に出よ。 旅だから出逢えた言葉2

書影

著 者:伊集院静
出版社:小学館
出版日:2017年7月31日 初版
評 価:☆☆☆(説明)

 ちょっと思ったのとは違ったけれど、まぁこれはこれでいいかと思った本。

 作家の伊集院静さんが、ダイナースクラブの会員誌に連載したエッセイを単行本にまとめたもの。帯に「世界の旅先でふっと心に響いた「ひと言」」とあって、その言葉に魅かれて読んでみた。「旅だから出逢えた言葉」の続編。

 全部で35編。旅の行先はスペイン、フランス、イタリア、アメリカと欧米を中心にした海外と、国内は北海道、宮城、長野、三重、山口。池袋とか銀座とかの都内もある。仕事で出かけた場所で、合間に街を歩いてみて…というのが多い。

 1遍だけを詳しく。著者は絵画を巡る旅の本の「スペイン編」「フランス篇」を上梓していた。次はイタリアへダ・ヴィンチの取材に、というのが2011年の3月のこと。このイタリア行は震災のために中止。そこに「イタリア編が完成して、それを読むことができたら生まれて初めてイタリアに旅をしようと思います」という七十五歳の女性からの手紙が届いた。

 しかし著者には、美術の旅を読者に誘う適確なものを書ける自信がない。そんな著者に、作家の城山三郎さんがおっしゃった言葉がよみがえる。
 そこに行かなくては見えないものがあるのでしょうね

 私は副題の「旅だから出逢えた言葉」を「旅先で出逢った言葉」だと思っていた。例えば旅先の食堂で隣に座ったおじいさんとの会話の中の一言」とか。そうではなくて、このエッセイのように「思い出した」とか「関連がある」とかの言葉だった。このエッセイの場合は、旅に行ってさえいないし…。

 だから正直に言えば、肩透かしをくらったように感じたし、エッセイの中のエピソードで明らかになっているのだけれど、飲んだくれて暮していた著者の若いころの話には鼻白んでしまったし、そんな若者を7年あまりもタダで泊めてくれたホテルがあることに唖然としてしまった。

 でも、紹介された「言葉」には力があった。上に書いた城山三郎さんの言葉は平凡に感じるかもしれないけれど、旅の本質をこれほど的確に表していることばは他にないと思う。

 最後に、もうひとつ。モネの師匠が少年のモネに言った言葉
 目を見開いて自然をよく見てごらん

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