著 者:ジョージ・マクドナルド 訳:荒俣宏
出版社:筑摩書房
出版日:1986年10月28日 発行
評 価:☆☆☆(説明)
本書はなんと1895年に英国で出版されたもの。100年以上前だ。「アリス」のルイス・キャロルや「指輪物語」のトールキンに大きな影響を与えた、と裏表紙の紹介に書かれている。トールキンをして「ファンタジーの祖」という言い方をする方もいるが(私もどこかでそう言ったかもしれない)、さらに遡る先祖がいるということだ。
実はこの本、20年ぐらい前に家族が買ったものなのだが、私が入っている「本カフェ」というSNSで友達に「読みましたか?」って聞かれたことから手に取ったもの。何度かの引っ越しや本棚の整理をくぐり抜けて、20年も眠り続けた本。それを読むことになったのは何かの縁だと思う。
主人公ヴェインは、先祖代々続く屋敷を相続し、その図書室で出会った不思議な老人の導きで異世界へ足を踏み入れる。そこでは、荒涼とした大地に魔物が潜み、死者が眠る部屋がある、寒々しい世界。かと思えば、川が流れ、リンゴの実がなり、大人にならない子どもたちが暮らしてもいる。
解説による後付けの知識を言えば、「リリス」はヘブライの伝承に出てくるアダムの最初の妻の名。異世界の人々や出来事の多くは、創世記の時代の登場人物や出来事と関連があるらしい。生と死の問題を扱うことも含めて、宗教的な意味合いを持った物語だと言える。
しかし、そうした宗教的な含みを除いても本書の鑑賞はできる。この物語は「夏の夜の夢」のようなのだ。シェイクスピアのそれではなくて、夢の中の出来事がきっかけで醒めてしまうような浅い眠りの夢。異世界で、逃げ出そうとドアを開けたり、穴に落ちたりすると、夢から醒めるように元の世界に戻ってしまう。
それに、ミミズを放り投げると蝶に変身したり、地面が盛り上がって魔物の姿になったりは、夢らしいイマジネーションの世界だ。英語の「Fantasy」に「幻想文学」という言葉を充てることがあるが、本書はまさに「幻想」そのもの。奔放なイメージが楽しめれば本書は魅力ある作品となるだろう。
この後は、書評ではなく、読んでいて思い出した本について書いています。興味のある方はどうぞ。
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夢で見るような奔放なイメージの連続で、私は少し前に読んだある本を思い出しました。それはグラハム・ハンコックさんの「異次元の刻印」。世界中の妖精を見たという話、異星人と遭遇したという話、古代の壁画などを、シャーマンがトランス状態で観るイメージ(幻覚)と関連づけて、類似性を指摘したものです。
私は結構好きなのですが、古代文明の謎などを扱った著者の本の多くは、専門家から「トンデモ本」扱いされています。「異次元の刻印」でも、「幻覚」(妖精も異星人(だと考えられている存在)も)は、脳が作りだしたイメージなどではなく、実際に存在するもので、トランス状態になることで、その世界にアクセスする回路が開かれるのだ、という主張です。
「リリス」でも、私たちには知覚できない7次元の世界、という話もでてきますが、「超ひも理論」など理論物理学の大真面目な研究でも、13次元あるという主張もされています。ハンコックさんの主張を「そんなバカな!」で片づけることはできますが、「そうなのかも?」と思えば結構楽しめます。
こんにちは♪
大変遅くなりましたが、先日はコメントをありがとうございました。
ジョージ・マクドナルド、だいすきです。
特に「金の鍵(The Golden Key)」に惹かれます。
お子様向けの作品は他にいくつか読みましたが、「リリス」と「ファンタステス」は手元にあるのにまだ読んでいません。
私はまだその時期ではないようです…。
チクタクさん、コメントありがとうございます。
私は、恥ずかしながら著者のことをほとんど知りませんでした。
本文にも書いた通り、本棚に置いたきりで...
1度は読んだと思うのですが、あまりに覚えていないので
それもあやしくなってきました。
「金の鍵」という作品があるのですね。
読んでみたいと思います。
>私はまだその時期ではないようです…。
その時がくれば、本が呼んでくれるかもしれませんね。
この本は私も比較的最近に読み、幻想的で美しい描写が素晴らしいと思いました。
ただ、ファンタジーは子供の頃に読むのと大きくなってから読むのとでは違ってしまうなあ、と思いもしました。これは、もっと昔に読んでいたらよかったかもしれない…もちろん今以上に理解が届かなかったと思いますが、きっと自分にとって、より大きな存在になっただろうと感じました。
それにしても、100年前とは!!知らずにいたのでとても驚きました。
今でも魅力を保ち続けているというのは、本当にすごいことですよね!(・ ・ )
liquidfishさん、コメントありがとうございました。
そうですね。子どもの頃に読むのと、大人になってから読むのと
感じ方は違うでしょうね。
子どもの頃の方が、純粋に物語と相対することができるのでしょう。
「これは何を意味しているのか?」などと考えずに。
今も魅力を保ち続けているのは確かにすごい。そして購入できる
ところもすごいと思います。