人間学入門

書影

監修者:藤尾秀昭
出版社:致知出版社
出版日:2011年12月1日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 本書の出版社の広報をされている株式会社TMオフィス様から献本いただきました。感謝。

 新年最初の一冊には、この1年とその後の自分の有り方を、考えさせられた本を選んだ。本書は「致知」という月刊誌の出版社が、「先達に学び人間力を高める」ことをテーマに、発刊後33年間に蓄積したインタビュー・対談記事の中から、選りすぐりの8本を再掲したもの。
 全部で10人の方の含蓄のあるお話を伺うことができる。私が名前だけにしても知っていたのは、稲森和夫さん、渡部昇一さん、三浦綾子さん、小野田寛郎さんの4人。他には、森信三さん、坂村真民さん、樋口武男さん、大塚初重さん、新井正明さん、豊田良平さん。

 どの方も、困難を克服し道を究めた方ばかりだ。哲学者として、詩人として、作家として、経営者として、人の有りようや心の持ち方のあるべき姿を、実体験を基にして話されている。それは長い経験の中で獲得したものであり、その方法で今日に至ったわけだから、言葉に自信が漲っている。

 正直に言うと、この漲る自信を私は持て余してしまった。「(ある真言に)感動しない人は、本当に生きてこなかったから、それが、ぐぅっと体に響いてこないんですよ」と言われて、「なんて傲慢な」と反発してみたり、「どうせ私にはその真言を受ける資格がない」と拗ねてみたり。
 ただし、そう感じるのには私自身によるところが大きい。本書のインタビュー・対談記事の合間に紹介されている、多くの方の「金言・名言」の中に「批判の目があったら学べません。(後略)」という言葉があった。これまでにも何度も思ったことだけれど、聞いた話が役に立つかどうかは、聞く側によるところが大きいのだ。

 「聞く側によるところ」には「タイミング」も含まれる。ある言葉が心に響くのは、ちょうどその言葉を欲していた時だったからだ、とも言えると思う。その「タイミング」を図るのは難しいのかもしれない。でも、何かに迷っている時、悩んでいる時に、本書のような先達の言葉をひもとけば、得られるものは大きいはずだ。
 本書を持て余し気味の私でさえ、渡部昇一さん、三浦綾子さん、小野田寛郎さん、新井正明さん、豊田良平さんの言葉の中に、気付くものがあった。

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