限界集落株式会社

書影

著 者:黒野伸一
出版社:小学館
出版日:2011年11月30日 初版第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 タイトルの中の「限界集落」とは、65歳以上の高齢者が人口の50%以上を占め、冠婚葬祭など社会的共同生活の維持が困難になっている集落を指す。そのまま推移すればやがて消滅することが予想される。先行きの暗い言葉なのだ。

 その言葉の暗さに反して、裏表紙まで続く表紙のイラストの、緑豊かな山村の風景をバックにした人々の表情は明るい。帯には「逆転満塁ホームランの地域活性化エンタテインメント!」の言葉。

 このタイトルと表紙と帯で、内容は想像ができる。窮地に陥った山村の人々が、何かをきっかけにして一念発起、様々な困難はありながらもそれを克服して、村を救ってさらに発展させる...。きっかけは?若者か他所者かバカ者かの登場だろう。...想像通りの物語だった。

 舞台はおそらく群馬県か長野県の山間にある人口58名の集落「止村(とどめむら)」。主人公は3人。1人目は多岐川優。銀行やIT企業で華々しく活躍していた。起業の前に少しのんびりしようと、祖父が亡くなるまで住んでいた止村に来た。つまり若者で他所者というわけで、優が物語のきっかけとなる。

 残る2人は大内正登と美穂の親子。正登は一度村を出たが4年前に20年ぶりに戻って来た。美穂は正登がいない間も止村の祖父母の家で育った。物語は、この3人の視点を入れ替えながらテンポよく進む。

 想像通りだからと言って、それは面白くないとか退屈だとかいうことではない。主人公の3人はもちろん、その他の登場人物のそれぞれが物語を抱えている。それが組み合わさって、新たな物語を生む。地域活性化を描きながら、ラブストーリーがしっかり組み込まれているのは、有川浩さんの「県庁おもてなし課」に似ている。

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