14.ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

マライアおばさん

書影

著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ (訳:田中薫子)
出版社:徳間書店
出版日:2003年11月30日
評 価:☆☆☆(説明)

 題のマライアおばさん、というのは主人公ミグの父のおばさん。年のためか杖がないと歩けない、誰かに手伝ってもらわないと着替えもできない。しかし、とても傲慢で、他人に何かを頼むときにも、「別に~~してくれなくても良いんだよ」なんて言い方をする。言葉どおりに、本当やらないでいると口を極めてののしるくせに。
 著者によると実在のモデルがいるらしい。イヤだね、そんな人がそばにいたら。年をとれば多少頑固にも卑屈にもなるし、身体が不自由なら他人の世話になるのも仕方がない。のだけれども、マライヤおばさんは、そんなんじゃなかった。

 ネコを追い払うために、杖を振り回して走っていたりする。どうも身体が悪いというのはウソらしい。それどころか、本当は魔女でこの街を牛耳っていた。20年も前からの陰謀によって、この街は女性だけが元気で男性は生気を失ってゾンビのようになっていた。

 前半は、幽霊なども登場し、おばさんのやり口が陰湿でジメジメした感じがする。しかし、謎解きが進み始める中盤以降は一気に読ませるのでご安心を。時間を自由に行き来しながら問題を解決するところの軽快さや、最後の全面対決からエンディングに向かう流れは、ジョーンズならではの盛り上がりだろう。
 原題は、「Black Maria」。トランプでスペードのQを取ってしまうと減点になるゲーム。

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七人の魔法使い

書影

著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ (訳:野口絵美)
出版社:徳間書店
出版日:2003年12月31日初版
評 価:☆☆☆☆(説明)

 1984年の作品、1985年の「世界ファンタジー大賞」にノミネートされ、1992年にBBCでテレビドラマ化されている。このテレビドラマはDVD化され、日本語訳もついて手に入れることができる。

 とにかく面白そうな設定を詰め込んだ、という感じのストーリー、楽しめる。
 主人公はハワードというごく普通の少年。少し身体が大きくて、腕っぷしには自身があるらしいが、特に何かの能力があるわけではない。
 それに対して、登場する魔法使いたちは個性的だ。7人兄弟で、電力、警察、音楽、教育、交通、下水、犯罪などと、分担してこの町を影で支配している。そして、仲がすごく悪い。多くは性格もすごく悪い。何人かは世界制服までたくらんでいる。

 その7人だが、どういうわけか作家であるハワードの父が書く2000語の原稿が原因で、この町を出られないらしい。そこで面白いのが、父さんの原稿を手に入れるために魔法使いたちがやるいやがらせだ。電機ガスを止めてしまうやつ、家の前の道で工事を始めて穴を掘るやつ、楽団を送って延々と演奏をさせるやつ。
 家の前にいきなり楽団が来て演奏を始め、チアリーダーが踊りだすなんて、想像するだけでも愉快だ。魔法を使えるんだから、もっと効果的に言うことをきかせる方法があるだろうに。
 伏線あり、あっと驚く展開ありで楽しめる。

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アブダラと空飛ぶ絨毯 -ハウルの動く城2-

書影

著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ (訳:西村醇子)
出版社:徳間書店
出版日:1997年8月31日初版 2004年11月10日32刷
評 価:☆☆☆☆☆(説明)

 映画「ハウルの動く城」の原作「魔法使いハウルと火の悪魔」の姉妹編。題名に「ハウルの動く城2」と書いてあるのだが、ハウルその人は、残り15ページというところになってやっと出てくる。実は、もっと前にも登場するのだが、読者には分からない。主人公もアブダラという青年だし。ハウルの動く城の続編だと思った人は裏切られることになる。このタイトルはいかがなものか。

 タイトルには不誠実さを感じるが(おそらく著者のせいではない。日本の出版社が付けたのだろう。それも最近になって付けたのかも)、物語は「ハウルの動く城」より完成度も高いし面白い、それに分かりやすい。ジブリはこっちも映画化すればどうだろう。
 今回は、主人公アブダラには、結婚を約束した恋人「夜咲花」を助けるという目的がある。旅の道連れもいる。敵役もいる(これが、完全な悪人ではないところがニクい)。そして最後にタネ明かし。何となくアラビア風の雰囲気もあって、面白くなる要素がギッチリ。

 「魔法使いハウルと火の悪魔」を読まずに、これだけ読んでも楽しめるが、最後のタネ明かしは面白くないだろう。つまり半分しか楽しめない。「ハウルの動く城2」としたのは、1を読んでから読め、というサインなのかも。

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魔法がいっぱい 大魔法使いクレストマンシー外伝

著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ (訳:田中薫子・野口絵美)
出版社:徳間書店
出版日:2003年3月31日初版
評 価:☆☆☆☆(説明)

 クレストマンシーシリーズの外伝。短編が4つ収められている。

 「キャットとトニーノの魂泥棒」が一番面白い。トニーノがクレストマンシー城に来てからの話なので、「トニーノの歌う魔法」の直後の話だ。タイトルどおり、「魔女と暮らせば」のキャットとトニーノが主人公。「クリストファー魔法の旅」の時のクレストマンシー、ゲイブリエル・ド・ウィットや、その他の登場人物、もちろんクリストファー・チャントも登場する。著者は、シリーズのまとめとして、このオールスターキャストの物語を書いたのかも。

 次が、「キャロル・ホールの百番目の夢」。夢を巻き取り機で取り出してビンに詰めたり、枕にして売るという設定がすばらしい。キャロルは自分の夢をそうやって売って有名になった少女。夢の中の登場人物が、待遇の改善を訴えるという、奇想天外な展開がさらにすばらしい。

 「見えないドラゴンに聞け」は、ハラハラドキドキ感としては4編中最高。歴史のパラドクスなどを巧みに取り入れていてすごく面白い。クレストマンシーは少し超人的すぎるかも。今回は天界へ登って、神々を諌めるのだから。
 クレストマンシーシリーズのパラレルワールドの中には、神々が治める世界もあったというわけだ。

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トニーノの歌う魔法 大魔法使いクレストマンシー

著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ (訳:野口絵美)
出版社:徳間書店
出版日:2002年3月31日初版
評 価:☆☆☆☆(説明)

 クレストマンシーシリーズの第2作目。シリーズの中を時系列で並べれば、「クリストファー魔法の旅」から25年、「魔女と暮らせば」の半年後、になる。
 舞台はイタリア、カプローナという、フィレンツェ、ピサなどに囲まれた小国。モンターネ家とペトロッキ家という2つの呪文作りの名家があり、互いに反目しあっている。その反目がカプローナ全体の徳の力をの低下を招き、呪文の効力がなくなっている。どうらや悪の第魔法使いの仕業らしい、というストーリー。
 今回は、クレストマンシーは重要な役柄ではあるけれども、出番は少ない。メインは反目しあう両家の若い世代が、頭の固い大人たちより先に協力して、難題と危機を乗り越えていく様子だ。イタリアだし、反目しあう2つの名家だし、ロミオとジュリエットみたい。

 クレストマンシーのいる世界は「魔法が私たちにとっての音楽と同じぐらいありふれている」と、シリーズの本の冒頭に書いてあるが、カプローナでの呪文とは、まさに音楽。歌うことで木が芽吹き、花が咲き、もっと不思議なことも起こる。歌詞にも曲にも強い力が宿っている。とっても面白い着想だと思う。
 世界中、「歌」が存在しない地域や文化はないのじゃないか、と思う。歌には本当に何らかの力が秘められているのかも。

 シリーズの子どもの主人公たちは、皆、魔法についての劣等感を持っている。キャットもクリストファーも、そしてこの本のトニーノも。自分は魔法は得意ではないと思っている。しかし、実は特別な能力を持っている。そういったところが読者を勇気付ける。シリーズ長編4作の中でも、「クリストファー魔法の旅」と並んで秀作だと思う。 

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クリストファー魔法の旅 大魔法使いクレストマンシー

著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ (訳:田中薫子)
出版社:徳間書店
出版日:2001年10月31日初版 2001年12月20日第2刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 ダイアナ・ウィン・ジョーンズのクレストマンシーシリーズの4作目。時系列で言えば、1番最初の物語になる。シリーズの他の物語ではクレストマンシーである、クリストファー・チャントの少年時代の話。その時のクレストマンシーは、ゲイブリエル・ド・ウィット。その前は、ベンジャミン・オールワージーと言うらしい。

 シリーズ4作品中3作品を読んだが、これが一番面白い。ストーリーにムリや退屈なところがなく、ドラマティックでさえある。数多くの並列世界の成り立ちや、その間を行き来することなどが、とても分かりやすく描かれている。
 他の作品で、クリストファーが銀に弱いことや、時々うわの空の表情になることなどの理由が明らかにされている。正直言って、うわの空になることには、もっと深い理由を想像していた。「退屈しているのがばれないように」というのがその理由なのだが、これでは納得いかない。退屈しているのはバレバレだし、確か他の本では、大事な話の最中にもうわの空になっていたように思うのだけれど。
 成長物語や、人間ドラマ、裏切り、アクション、謎解き、と色々な要素があり、シリーズ4作目で完成されたと言うところか。
 そう言えば、肉親に利用されるところなど、この次のクレストマンシーになるエリックの境遇とよく似ている。自分の能力に気が付かないところもだ。いや、人間の才能とはそういったものなのかも。

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魔女と暮らせば 大魔法使いクレストマンシー

著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(訳:田中薫子)
出版社:徳間書店
出版日:2001年12月31日初版
評 価:☆☆☆☆(説明)

 ダイアナ・ウィン・ジョーンズのクレストマンシーシリーズの第1作目。訳者注によれば、時系列で言えば4部作の2番目、1番目の「クリストファー魔法の旅」の25年後、3番目の「トニーノの歌う魔法」の6ヶ月前なんだそうだ。まだ、この2冊は読んでいないので、前後とどのようなつながりがあるのか、またはないのか、読んでみたい。
 今回の舞台は(というより、著者にしてみれば1作目なのだから、最初の舞台は、と言うべきか)、魔法が当たり前に存在する世界。それに、クレストマンシーが属する世界でもある。ストーリーは、主にそのクレストマンシーの城で展開される。
 主人公はグウェンドリンとキャット(エリック)の姉弟。姉には魔力があるが弟にはない。姉の魔力のせいかどうか、二人はクレストマンシー城で暮らすことになるが、姉の方は主人公とは思えない傍若無人ぶり。お話の最後に姉弟の秘密は明かされる。

 クレストマンシーを始め、登場人物の性格付けがよくされている。ちょっと俗っぽくて嫌味な感じの人が多いけど、そこが妙にリアルなのかも。後半には戦いのヤマ場もあり、パラレルワールドやクレストマンシーの位置付けなど、シリーズ共通の設定もキチッとされている。シリーズを読むのならこれから読むのが良いのでは。

 グウェンドリンの行いで、何人かの娘が住む世界が変わってしまう。しかし、誰も不幸になった者はいないことになっている。そういった説明が少し言い訳っぽかった。
1978ガーディアン賞受賞。

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魔法使いはだれだ 大魔法使いクレストマンシー

著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(訳:野口絵美)
出版社:徳間書店
出版日:2000年8月31日初版 2001年10月15日第2刷
評 価:☆☆☆(説明)

 ジブリによる映画化で有名になった「ハウルの動く城」の原作者の本。「ハウルの動く城」は1986年に発表、本作は1982年発表なので直前と言っても良いだろう。しかし、著者は1970年に最初の作品を発表後、2005年までに単行本で44作、年に3作という年もある多作の著者だ。
 本作は、「大魔法使いクレストマンシー」シリーズ4部作の3作目。どういうわけか、徳間書店のこのシリーズでは1番初めに出版された。
 クレストマンシーとは、魔法の使われ方を監督し、問題が起きると駆けつけて解決するという役職の名前。本書は、そのクレストマンシーシリーズの作品なのであるが、彼が登場するのは288ページの本の中で、200ページを過ぎてから。それも、窮地に陥った子どもたちが「クレストマンシー!」と叫ぶと現れる、というまさに正義の味方の登場パターンだ。颯爽と現れて、鮮やかに解決してしまう。解決が素早い分、それまでの学園生活の描写が長々しく感じてしまう。寄宿学校という閉ざされた舞台でのいじめなど、ちょっと滅入る部分もある。
 舞台となったのは、魔法が禁止されていて、魔法使いだということが分かると火あぶりにされてしまうという、恐ろしい世界。なのに、結局はクラスのほぼ全員、校長までが魔法使いだった、という結末は意外といえばそうだけど、こんなんで良いのかしらと思った。しかし、学園者ゆえに登場人物が多めなのに、それぞれの個性が丁寧に描写されていたり、飽きさせない語り口はさすが。

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