崖の国物語10 滅びざる者たち

著 者:ポールスチュワート 訳:唐沢則幸
出版社:ポプラ社
出版日:2009年9月第1刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「崖の国物語」堂々の完結編!。9巻目の「大飛空船団の壊滅」のレビューにも書いたが、このシリーズは、世代が違う血のつながったクウィント、トウィッグ、ルークの3人の若い頃の物語が、順序を変えながら綴られてきた。それぞれを主人公にして3巻づつで、バランスとしては9巻目が最終巻と思われたが10巻目の本書が出た。これが本当の最終巻。3人の物語には発展があるのか?

 時代はなんと、ルークの時代から約300年後。クウィント、トウィッグ、ルークの3人はそれぞれ空賊や槍騎兵として、伝説上の人物になっていた。そして今回の主人公は、鉱山で点灯夫という仕事をしているネイトという若者。彼と伝説の3人の関係は分かっていない。ただ父から遺されたメダルに描かれた空賊の肖像画には、何か意味があるらしい。
 そして、ネイトが鉱山を追われた後、ヒロインのユードキシアら数々の出会いと危機を経て運命に導かれるストーリーを中心に、複数の物語が並行して進められる。一見して無関係意のそれぞれの物語が、ネイトのメインストーリーに次々と縒り合わされていく。この辺りの手法は見事だ。

 このシリーズの特長とさえ言えるのだけれど、本が厚い。本書は101章、860ページ超もある。これが苦もなく読み切れるのだから、いかに物語に牽引力があるかが分かるだろう。スピード感と起伏に富んだストーリーが楽しめる。
 前9巻の内容を上手にすくい取ったという意味では、よくできた「完結編」だ。よくできてはいるけれど、壮大な物語をまとめるにはちょっと力不足だったかも。しかし、そんなこととは別に構わない、ネイトの物語が充分に面白い。ネイトとユードキシアという魅力的なキャラクターの物語はまだ始まったばかりだ。「これが本当に最終巻」という言葉は保証の限りではない。

 とは言え、現在のところ公式には最終巻ということなので...
 この「崖の国」シリーズは、ファンタジーが好きな方にはオススメ。魔法は出てこないけれど、とても面白い冒険活劇的異世界ファンタジーの傑作。ただし、私の感想では第1巻がちょっと退屈でいただけない。2巻でグンと良くなり3巻4巻5巻...と巻を重ねるごとに面白くなる。7巻は最高傑作だと思う(8巻以降がダメという意味ではない。念のため)。だから、このシリーズを読もうと思った方は、是非少なくとも2巻までは読んで欲しい。

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