編 者:新潮社ストーリーセラー編集部
出版社:新潮社
出版日:2009年2月1日 発行
評 価:☆☆☆(説明)
本書は、月刊の文芸誌「小説新潮」の2008年5月号別冊として発売された雑誌を文庫化したもの。伊坂幸太郎、有川浩、近藤史恵、佐藤友哉、本多孝好、道尾秀介、米澤穂信の7人の書き下ろし短編が収録されている。
伊坂幸太郎さん、有川浩さんは私が好きだと公言している作家さんだし、近藤史恵さんは「サクリファイス」を読んで関心度が急上昇中。しかも収録されているのは「サクリファイス」の外伝だという。文庫で860円とは安くはないが、私にとっては何ともお買い得な1冊だ。私が注目した3人以外の4人も、それぞれに文学賞を受賞された方々だそうで、出版社が「物語のドリームチーム」なんて言うのも分かる。
伊坂さんの作品は、短いながらもちょっと捻りの効いた伊坂作品らしいモノ。近藤さんの作品は「サクリファイス」のテイストそのままの外伝。すごく良かったとは言えないが、まぁ期待通りだった。ちょっと不満があるのは有川さんの作品。この作品は私は好きになれない。著者が「悪意」や「悲劇」も描けることは分かっているが、読後感は大事にしてほしい。
「ドリームチーム」でもいつも最高のパフォーマンスが出せるとは限らない。一流選手も調整不足で良い結果を出せないことがある。詳しくは分からないが、雑誌に向けての書き下ろしと1冊の単行本の出版とは、かける時間や推敲の量が違うのかもしれない。奇しくも有川さんの作品は、雑誌にたくさんの物語を身を削るように書く小説家の話。著者もあんな風に雑誌に作品を書いているのかもと思うのはいけないことだろうか?
そんな想像から、小説を読むなら文芸誌よりも本として出版されたものを読む方が良いのではないかと思った(例え文芸誌に連載されたものをまとめて単行本として出版するにしても)。ただ、文芸誌にも良いところはある。それは、新しい作家さんとの出会いだ。
本を買うならなおさらだが、図書館で借りるにしても未知の作家さんの本を手にすることは限られている。その点、本書は私が知らない4人の作家さんの作品を読む機会になった。どの作品にもちょっと毒があるのだけれど、もう1冊ぐらい読んでみようかな、と思う。
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