図書館内乱

著 者:有川浩
出版社:メディアワークス
出版日:2006年9月30日初版
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「図書館戦争」の続編、シリーズ化が決定したわけだ。とは言え、前作で振ってあった主人公と両親の関係や、上官とのいきさつなどが、本作で結論を得ることを考えると、少なくともこの2作目までの構想は、前作からあったと思われる。

 スピードとエンタテイメント性は前作のレベルを保っている。今回はそれに加えて、主人公周辺の登場人物の描き込みが進み、ストーリーが立体的になった。上官の1人には、もう子ども扱いできない、年下の幼なじみがいる。抜群の成績を誇る同僚には、意見が合わないが越えることもできない兄がいる。美人のルームメイトには心の葛藤がある、といった具合。
 前作が、なんとなくありがちなストーリーの軽さが否めなかったの対して、今回はドラマ性もあって深みも加わってGOOD。

 さて、今回のタイトルは「図書館内乱」、図書館内での争い。国家権力に抗する図書館も一枚岩ではない。「図書館の自由に関する宣言」を言葉通りに実践する「原則派」、行政がコントロールすべきだとする「行政派」があり、さらには図書館を国家機関に格上げしようと画策するエリートたちもいる。
 主人公のように、図書館が市民の権利を守ることは正しいのだ、いかなる場合も正しいことを行うのは正しい、という単純なものではない。
 宗教でも他の宗教との争いより、同じ宗教の中の異端排斥の方が苛烈だと言う。こちらの争いも、表面的には穏やかでも、ドンパチやっていた前作よりもダークで激しい戦いになっている。今後の展開にさらに注目。

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