著 者:三浦しをん
出版社:徳間書店
出版日:2012年11月30日 初刷
評 価:☆☆☆☆(説明)
「お仕事小説 林業編」の「神去なあなあ日常」の続編。主人公の平野勇気が、架空の読者に向かって綴る手記の体裁を取った、7つの短編からなる連作短編集。
勇気は、高校卒業後に母親と先生に謀られて、三重県の山奥の神去村に放り込まれて林業に携わり、曲折はありながらも村で1年間を過ごした。その間に勇気の心には、村と林業への愛情が芽生え、村の方も勇気を受け入れるようになった。と、ここまでが前作の内容。
今回は勇気が、神去村の起源となる伝説や、居候先のヨキとみきの夫婦のなれそめ、村のお稲荷さんの言い伝え、そして20年前の痛ましい出来事などを、親しい人たちから聞く。もちろん前作から引き続き、勇気と彼が慕う年上の女性である直紀さんとの関係の進展も描かれる、居候先のシゲばあちゃんのユーモアも健在だ。
昔語りが多いこともあって、物語を一つづつ静かに積み上げる感じだ。前作にあった、オオヤマヅミさんという山神を祭る大祭のような盛り上がりはない。しかし、その抑え目な調子に、二十歳になった勇気の成長を感じるし、山村の日常にも合っていると思う。
前作の物語が、勇気の神去村の「現在」の体験だとすれば、本書は、勇気が神去村の「過去」あるいは「記憶」に触れる体験だと言える。小さな村の社会は共通の「記憶」が積み重なって出来上がっている。今回の体験は、勇気が村の一員となるために必要なことであったし、村が勇気に懐を開いた証でもあると思う。
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