2Q.碧野圭

書店ガール5 ラノベとブンガク

著 者:碧野圭
出版社:PHP研究所
出版日:2016年5月20日 第1版第1刷
評 価:☆☆☆(説明)

 新天地で頑張る姿に思わず応援したくなった本。

 「書店ガール」の第5巻。このシリーズの最初の3巻は、西岡理子と小幡亜紀の二人の書店員が主人公で、前作「書店ガール4 パンと就活」で、彼女たちの後輩の高梨愛菜と別の書店の宮崎彩加の2人にスイッチされた。本書では宮崎彩加を残して、もう一人は小幡伸光が主人公になった。

 伸光は編集者で、大手出版社のライトノベル部門の責任者。そして3巻まで主人公だった小幡亜紀の夫でもある。前回の主人公のスイッチでも物語が広がったけれど、今回の主人公の交代も同じようによかった。「書店」でも「ガール」でもないのが反則かもしれないけれど、そんことはいい。

 彩加は前作の終わりに、契約社員から正社員になると同時に、茨城県は取手の駅中書店の店長になった。前にいた吉祥寺のお店でも担当していた、得意な文芸書で店づくりをしているが、どうも客層が違うようだ。伸光は元はコミックの編集者だったが、会社の方針でライトノベルのレーベルを一から立ち上げた。ライトノベル業界の中でも会社の中でも、新参者で立場が弱い。

 二人とも苦労している。特に伸光の方は、あちらからもこちらからも逆風が吹いている感じで、会社員であれば誰しも身につまされる。その後は、解説の大森望さんが「いくらなんでも話が出来過ぎじゃないか」と書くような展開なのだけれど、リアリティがないわけではない。なにより私がこういう展開を期待していた。

 彩加の恋バナもちょっとあって、これは今後も続けて欲しい。

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書店ガール4 パンと就活

著 者:碧野圭
出版社:PHP研究所
出版日:2015年5月22日 第1版第1刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 シリーズの主人公が変わって「おっ!」と思った本。

 「書店ガール」の第4巻。これまでの3巻の主人公は西岡理子と小幡亜紀という、吉祥寺の新興堂書店の書店員2人だったけれど、本書では高梨愛菜と宮崎彩加の2人にスイッチされた。愛菜は新興堂書店の学生アルバイト、彩加は駅ビルにある別の書店の契約社員。勤め先は違っているけれど二人は友人。

 愛菜は大学3年生で友人たちは就活をスタートさせている。愛菜自身はこのまま書店業界に就職、という考えもある。しかしそれを聞いた友人たちは「えっ本気?」という反応。彼らにしてみれば、書店などという斜陽産業に就職するなんて「将来とか真剣に考えてるのか?」ということなのだ。

 彩加には正社員への登用の話が持ち上がる。ただし、新規オープンする茨城県の取手店への店長としての転出が条件。さらに実家の沼津の母親から伯母が経営する書店の相談を受ける。差し当たっては改装の相談だけれど、「あんたが継いでくれるなら、それでもいい」という話もされる。

 とても興味深いストーリーだった。主人公のスイッチが物語の広がりに繋がった。例えば、年齢をぐっと下げた愛菜を主人公としたことで、就活というほとんどすべて読者に共通するテーマを取り込んだ。彩加のエピソードは、これまで首都圏が中心だったシリーズに、地方都市が抱える問題を違和感なく加えることができた。

 次は物語がどんな風に広がっていくのか楽しみだ。

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書店ガール3 託された一冊

著 者:碧野圭
出版社:PHP研究所
出版日:2014年5月22日 第1版第1刷
評 価:☆☆☆☆☆(説明)

 この記事を書くために部分部分を読み直していて、繰り返し涙が出た本。

 「書店ガール」の第3巻。主人公はこれまでと同じ、西岡理子と小幡亜紀の2人。舞台は前作の新興堂書店吉祥寺店に、仙台の櫂文堂書店が加わった。理子が、新興堂書店チェーンの東日本エリアのエリア・マネージャーに昇格、櫂文堂書店は新たにチェーン傘下に入って理子が担当になった、創業90年の老舗書店だ。

 理子も亜紀も試練の時を迎えていた。理子は、新しく担当になった櫂文堂書店のスタッフとの関係に悩んでいた。店長代理の沢村稔と打ち解けようとしても「亀の甲羅のように固い警戒心を身に纏って」そっけない態度しか返ってこない。

 亜紀は、育児休暇を終えて復帰して半年。好きだった文芸担当からビジネス書や経済書の担当に変わった。不案内で客からは不満を言われる。息子の保育園の迎えなどは母が協力してくれているが、それでも熱を出した時などは綱渡りだ。

 まぁこんな感じで始まって、これまでの2巻がそうであったように、それぞれが抱える問題は一進一退しながら解決に向かっていく。しかし今回は物語の芯はそこにはない。

 今回の物語の背景には東日本大震災がある(設定は2年半後になっている)。敢えて詳しくは紹介しないけれど、東北の被災者のことを考えると共に、「あの時自分は」と「あれから自分は」を、考えさせる物語になっている。涙なしには読めない。

 最後に心に残った言葉を。

 東京はこれだけ人が多いんですから、それに反応してくれる心優しい人の数も少なくないはず。それを売ってうちの儲けになって、おまけに人助けまでできるなら、最高じゃないですか。それが東京の本屋の在り方でしょう

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書店ガール2 最強のふたり

著 者:碧野圭
出版社:PHP研究所
出版日:2013年4月1日 第1版第1刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 重労働で大変なお仕事だとは知っているけれど、書店員っていい職業だなぁと思った本。

 「書店ガール」の続編。主人公は前作と同じで西岡理子と小幡亜紀の2人。舞台も書店であることは同じだけれど、店は変わっている。前作で二人が勤めていた「ペガサス書房吉祥寺店」は、理子と亜紀ら店員の奮闘にも関わらず閉店となり、半年後にオープンした「新興堂書店吉祥寺店」に移っている。理子はスカウトされた形で店長に、亜紀は文芸書担当の正社員として採用された。

 理子は42歳。亜紀は29歳。前作では衝突の絶えなかった二人だけれど、本書ではいい関係が築けている。理子は亜紀を信頼しているし、亜紀は理子を尊敬している。勤め先の書店が大型書店チェーンになって労働環境が良くなったこと、亜紀が仕掛けた本が評判となって本屋大賞を受賞するなど、文芸書担当としての書店員として認められ充実していることも、二人の関係にいい影響を与えているのだろう。

 物語の初めの方で亜紀の妊娠が分かる。そのことで夫の保守的な面が顕わになる。「子供が三歳になるまでは母親の手で育てた方がいいっていうのは、常識だろ」とか言うのだ。亜紀は亜紀で「いずれは子供をと思ってはいたけれど、もうちょっと後がよかったな」というのが本音。業界的な繋がりも広がりつつあり、仕事が面白くて仕方ない時期で、ここで半年、一年休んでしまったら..という不安がある。

 この亜紀の妊娠や夫との関係を折々に描きながら、物語は多くのテーマを取り込みながら進む。書店業界全体の停滞。大型書店と中小の書店の間の齟齬と協調。言葉狩りのような言論空間の閉塞と不寛容。そんな中で協力し味方になってくれる仲間の有難さ。出版に携わる者の喜び。そして理子の恋愛模様まで。

 面白かった。ほぼ一気読み。ストーリーの本筋からは少し離れているのだけれど、心に残った場面がある。物語の中にいろいろな書店が「五十年後にも残したい本」を選ぶ、というところ。私はその書名を興味津々で追った。「あの本が選ばれてる!」とか思いながら。

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書店ガール

著 者:碧野圭
出版社:PHP研究所
出版日:2012年3月29日 第1版第1刷 2015年3月31日 第25刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 書店員を主人公にした物語。「本屋さんのダイアナ」「桜風堂ものがたり」もそうで、ここ数年で増えているのかもしれない。お店のPOPからベストセラーが生まれたりして話題になったり、本屋大賞で書店員さんの選択がクローズアップされたり、そういうことも関係しているのかも。

 タイトルが書店ガールというぐらいだから、主人公は女性。西岡理子と北村亜紀の2人。ともにペガサス書房吉祥寺店に勤めている。理子は副店長で、亜記は正社員。上司と部下の関係にある。物語は亜紀の結婚披露パーティから始まるのだけれど、ちょっとした行き違いもあって、2人が修羅場を演じる。先が思いやられる幕開けだ。

 冒頭の事件から予想される通り、2人の間はずっとギクシャクしていて、衝突を繰り返しながら物語が転んでいく。主に亜紀の気の強さが原因なのだけれど、40歳で「理知的な美人」という評の理子にも失敗はある。亜紀にも少しある「上司に従う気持ち」と、理子の副店長としての責任感、それと「書店員の仕事が好き」という共通点が、なんとか2人をつないでいる。

 そしてお店の存続の危機を迎える。「書店員の仕事が好き」という共通点が、2人をより強く結びつける...。

 物語を楽しめた。女性同士の(というか、アルバイトも含めた女の)争いは、男の私にはちょっと痛々しかったけれど、後半のお店の存続をかけた展開は面白かった。池井戸潤さんの企業モノを、舞台を1つのお店にして主人公を女性にして描いた感じ。本書はシリーズ化されて、既に6作まで出ているらしい。楽しみが増えた。

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