著 者:ブラッド・メルツァー 訳:越前敏弥
出版社:角川書店
出版日:2008年1月31日初版発行
評 価:☆☆☆(説明)
著者は米国ではヒットを何作かモノにしていて、そこそこの人気作家であるらしい。日本では有名とは言えない、少なくとも私は寡聞にして本書を手に取るまで知らなかった。
ストーリーは、8年前の米国大統領暗殺未遂事件から始まる。主人公は大統領の下級補佐官であるウェス。その暗殺未遂事件で流れ弾を受け、顔の右半分を損傷して、傷は目立たなくなって来たが神経は元に戻らなかった。
その暗殺未遂事件で、次席補佐官であったボイルは、胸に銃弾を受け死亡してしまった。ボイルを大統領の車に乗せたのはウェスであり、彼はそのことで、許してもらうことのできない負い目を感じている。
しかし、事件から8年後、マレーシアで整形したボイルに出くわし(褐色の瞳に薄青い斑点という目の特徴で気づいた)、事件の裏にある陰謀に感づいて協力者とともに真相を追ってゆく。
それなりに面白かった。いわゆるノンストップ、ジェットコースターストーリー。ジャンル的にはポリティカルミステリーとでも言うのでしょうか、登場人物は、米国の元大統領とその側近たち、そして、CIA、FBI、シークレット・サービス。米国のテレビドラマが好んで使う配役だ。「ザ・ホワイトハウス」が大好きな私としては、「大統領次席補佐官」なんて人が出てくるだけで、ちょっとワクワクしてしまう。
でも、「それなりに」面白かった、という言い方が表す通り、ちょっと評価としては微妙な感じだ。
書名の「運命の書」から連想されるのは、1つは宗教的なウンチク本、またはそれを下敷きにしたミステリー。そうでなければ、例えば「中世に書かれた書物が発見され、そこには現代を見事に予言してあり、それによると近い将来...」、といった「○○の大予言」的なものかと思う。
本書は、敢えて言えば前者にあたる。宗教的な狂信的殺人者が出てくるし、フリーメイソンの秘密や暗号解読めいたものもある。しかし、ほんの味付け程度の扱いで、本筋に関わってはこない。
さらに、この位置づけの小説ですぐに思い浮かぶ本に「ダ・ヴィンチ・コード」があり、本書の宣伝でも「ダ・ヴィンチ・コードの次に読むべきもの」と謳われている。訳者が「ダ・ヴィンチ・コード」の訳者なので、こういうのもありなのかと思うが、あれを期待して本書を読んだのでは肩すかしをくらうだろう。買わせるための文句としては良いが、結果的に本書の評価を下げてしまうのではないか。本書は、あくまでも米国のポリティカルミステリーとして売った方が正解だと思う。
タイトルや宣伝文句を、本の評価に含めて良いかどうかはわからないので、それらをヌキにしても、上下巻700ページ余りは長すぎた。せっかくスピード感があるのだから、もっとギュッと濃縮した方が楽しめたと思う。
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