52.感動コミック

感動の条件 序章

書影

著 者:田原実 絵:笹原金賀
出版社:インフィニティ
出版日:2011年7月30日第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 本書は、株式会社インフィニティが発行している「感動コミック」シリーズの第8弾。株式会社インフィニティ様から献本いただきました。感謝。

 このコミックは、大分県中津市の「天’sダイニング 陽なた屋本店」他の飲食店を経営する永松茂久さんの物語。小さいころからの夢だったたこ焼き屋「天までとどけ。」を26歳で開店し、その後、生涯納税額日本一の大商人、斎藤一人氏と出会うまでを中心に描いている。

 一見してサクセスストーリーだ。小学生の頃から「絶対たこ焼き屋になる」と決めていた永松さんが、様々な「ビジネスの先輩たち」(一番の先輩は永松さんのお父さんだ)の導きによって、全国からお客さんが集まる繁盛店のオーナーになっていく。
 もちろん、何もしない若者を導いてやるほど、ビジネスの世界は甘くない。永松さんに、「たこ焼き屋になる」という、がむしゃらとも言える真っ直ぐな熱意と努力があればこそだ。時には厳しく時には優しく力になってくれる大人を、永松さん自身が引き寄せたと言える。

 私としては、このサクセスストーリーだけで十分に面白いのだけれど、これだけでは「感動コミック」には物足りないらしい。詳しくは言えないけれど、感動の勘所は別にある。店の名前の「天までとどけ。」は、ある人に向けたメッセージだ、とだけ紹介しておく。(このブログで何度か書いているが、こういうのは私は必ずしも良しとしないのだけれど)

 永松さんには「感動の条件 」というDVD付の著書がある。私は読んでいないのだけれど、想像するに、本書はその著書に至るまでの部分に焦点を置いた物語、という意味で「序章」なのだろう。

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植松電機I

書影

著 者:田原実 絵:西原大太郎
出版社:インフィニティ
出版日:2010年11月23日第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 本書は、株式会社インフィニティが発行している「感動コミック」シリーズの第7弾。株式会社インフィニティ様から献本いただきました。感謝。

 このコミックは、植松電機の専務さんである植松努さんの半生を描いたもの。植松電機は、北海道のほぼ中央の赤平市にある、車載電磁石システムの設計・製作・販売の会社。車載電磁石とは、建設現場で鉄板を運んだり、廃棄物の分別のために使われる強力な磁石のこと。まぁ「どこにでもある」とは言わないが、普通の中小企業。しかし、植松さんと植松電機は、普通ではない事業に取り組んでいる。それは「宇宙開発」だ。

 物語は、植松さんの小学生時代から始まる。二宮康明さんの「よく飛ぶ紙飛行機集」を読んで、紙飛行機作りに夢中になる。自分で設計を試みるが失敗、「飛行機が飛ぶ仕組み」に興味を持ち、飛行機やロケットの仕事を志すようになる...。子どもたちの理系離れを嘆く大人たちが、泣いて喜びそうなストーリー。...だけであれば、「感動コミック」にはならない。

 植松さんは、飛行機の知識を独学で習得し、中学生のころにはそれは「航空力学」と呼べるほどのものになる。しかし夢中になるあまり、学校には馴染めず成績も落ちる。中学の進路相談で、植松さんの志に早くも大きな壁が立ちはだかる。「芦別(植松さんの出生地)に生まれた段階で無理」と、先生に宣告されてしまうのだ。
 その後も、大小いくつもの壁が立ち現れる。「○億円かかりますよ」「どうせムリですよ」「やったって何も変わりませんよ」 それを、最初は悩みながら、後には自信を持って乗り越える。そのキーワードは「だったらこうしてみたら?」 子どもたちとその親御さんたちに読んでもらいたい一冊。

 この後は、書評ではなく、この本を読んで思ったことを書いています。お付き合いいただける方はどうぞ

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(さらに…)

テラ・ルネッサンスII

書影

著 者:田原実 絵:西原大太郎
出版社:インフィニティ
出版日:2009年12月14日第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 株式会社インフィニティ・志経営研究所様から献本いただきました。感謝。もっと前にいただいていたのですが、紹介が今になってしまいました。

 タイトルから分かるように、以前に紹介した「テラ・ルネッサンスI」の第2弾。「「心を育てる」感動コミック」シリーズとしては、「かっこちゃんI」などにつづく6冊目の作品となる。今回もウガンダやコンゴでの元子ども兵支援や、カンボジアでの地雷除去支援などを行っている、NPO法人テラ・ルネッサンスと理事長の鬼丸昌也氏の活動が綴られている。

 ここで語られている真実は、私たちの(少なくとも私の)想像力を越えている。冒頭登場する少女は、ツチ族とフツ俗の民族対立に巻き込まれ家族をなくし、森の中や難民キャンプでの悲惨な境遇の中を一人で生き抜いてきた。他の男性たちは、子ども兵として戦い、足を失ったり視力を失ったりして故郷へ戻るものの、「人殺し」とののしられる。
 しかし今は、テラ・ルネッサンスの現地スタッフとして、かつての自分と同じような境遇の子どもたちを支援したり、技術を身につけて生計を立てたりしている。絶望の淵から這い出してきて、希望を見出して自分と家族の生を歩んでいる。
 「人生は要約できねえんだよ」とは、伊坂幸太郎さんの作品中のセリフだが、彼らの人生をこの本書が要約し、さらにそれを私が要約したこんな文章では、何ひとつ伝わらない。せめて本書を読んで想像力を振り絞れば、彼らの人生を少し理解できるかもしれない。

 テラ・ルネッサンスの活動は「無力感」との戦いでもある。世界には推定7000万個とか1億2000万個と言われる地雷を1つづつ破壊していく地雷除去の活動はもちろん、元子ども兵は30万人いると言われ、救える人数を上回る人数の新たな子ども兵が日々誕生している現状は、ほとんど何もできないに等しく感じる。
 しかし「微力ではあるが、無力ではない」それが鬼丸氏がこの活動を始めた想いで、おそらく今も精神的支柱なのだ。この言葉は、我々にも問いかける。「どうせ何も変わらない」ではなく、自分ができる「微力」を尽くそう。少しの時間とかお金とか能力とか、それを誰かのために使おう。

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かっこちゃんI

書影

画  作:池田奈都子
出版社:インフィニティ
出版日:2009年7月26日第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 株式会社インフィニティ・志経営研究所様から献本いただきました。感謝。

 以前にも「テラ・ルネッサンスI」というコミックをいただいた。これらは「「心を育てる」感動コミック」というシリーズで、企業の「人財育成」として、思いやりと優しさ・感謝の心を育んでもらうことを目的としたもの。金融機関やメーカー、人材派遣会社などが社員研修用に購入しているそうだ。
 最初のエピソードで泣いてしまった。私は簡単には泣かないのだけれど、ポロポロと涙がこぼれた。タイトルの「かっこちゃん」とは、石川県の養護学校(特別支援学校)の山元加津子先生のこと。本書には「かっこちゃん」が体験した、子どもたちとの間の話、おもしろイイ話など5つのエピソードが紹介されている。
 主人公として登場する子どもたちは、手足が不自由であったり難病に侵されていたりと、ハンディキャップがある子どもたちだ。その点では、盗作疑惑で回収という結果になった「最後のパレード」の中のエピソードのいくつかと同じなのだけれど、あちらでは泣けない。盗作云々が問題なのではない、ではどこが違うのか?

 「最後のパレード」のエピソードは「ディズニーランドが何をしたか」につきる。なくしたサイン帳の代わりにキャラクター全員のサインを用意する、パレードのダンサーが手を取りに来る、余命半年と告知された子どもを一生懸命励ます。どれも感動的ないい話だけれど、その主役はディズニーランドのキャストの方、ひねくれた見方をすれば、これは営業用の感動だ。
 それに対して本書の感動の主役は、子どもたちとその家族、つまり生の感動だ。よくよく見ると、「かっこちゃん」は何か特別なことをしているわけではない。子どもたちの話に耳を傾け、悲しいときや苦しい時に寄り添い一緒に悩み、時には子どもたちに勇気付けられる。壁を破るのは、子どもたち自身の力と家族の愛だ。「みんなみんなそのままが素敵。」という言葉はいささかありきたりだが、本書の最後に目にするとキラキラして見える。

 もちろん、特別なことはしていない、と言っても「かっこちゃん」は特別だ。特別ではない普通のことが、実は誰にでもできるわけではない。それから「かっこちゃん」は、この子どもたちの大切さや素敵さを、世界中の人に知ってもらうという特別な使命のために本を書き、講演する。それは、ある少女との約束でもある。本書もその使命の一端を担うのだろう。私もたくさんの方に読んでももらえるようオススメする。かっこちゃんと少女の約束のために。
 最後に、読むときは一人でいる時に。誰かが近くにいると、無意識にでも感情を抑えてしまうので泣けませんから

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テラ・ルネッサンスI

書影

著 者:田原実 絵:西原大太郎
出版社:インフィニティ
出版日:2008年11月21日第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 株式会社インフィニティ・志経営研究所様から献本いただきました。感謝。

 「本読みな暮らし」初登場のコミック。本書は「「心を育てる」感動コミック」というシリーズの第3弾。紛争地域の地雷除去や、戦乱の犠牲者である子ども達の保護や社会復帰などを行っている、NPO法人テラ・ルネッサンスと、その理事長の鬼丸昌也氏の活動の記録、ノンフィクションだ。
 「世界には6000万~7000万個の地雷と、約30万人の子ども兵が存在している」。この事実が、20代の鬼丸氏をこの活動へ、そしてウガンダへ向かわせた。そして氏が目にし本書に綴られたことは、恐らくほとんどの日本人が知らないでいる彼の地の悲惨な現実。取材に応じた子ども達の証言でそれが明らかにされている。私は「アフリカ 苦悩する大陸」を読んで、その一端は垣間見たけれど、その時はこういう臨場感は感じられなかった。

 実は、本書は1か月前に手元に届いていて、その日のうちに読んでいた。記事の掲載が遅れたのは、何を書けばいいのかを考えていたからだ。面白かったとか役に立ったとかの感想を書いたり、ストーリーがどうとかの評価をしたり、といったことでは、本書の紹介として足りないのではないか、と思ったのだ。
 本書を読んで私が受け取ったのは「この事実を知ってあなたはどうしますか?」という問いかけだった。それで、これへの返答を考えてから記事にしようと思って、今日になってしまった。その答えは「自分ができることをする」だ。拍子抜けするほどありきたりで、ホントに考えたのか?と言われそうだけれど、これが答え。

 ただ「自分ができることをする」とは「必ず何かをする」という決意も意味する。鬼丸氏はウガンダへ行き、出版元のインフィニティの田原社長は本書を出版し、売上5%をNPOの活動に寄付する。私は同じような影響力のあることはできないけれども、何かをすると決めたのだ。
 考えれば、寄付や会員費として資金を援助したり、誰かにこの話をしたり、本書を読むように促したり、できることは意外にたくさんある。でも、意識してやらないと何もできない。NPOのHPへのリンクも付けておいたので、一度覗いてみて欲しい。

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