アフリカ 苦悩する大陸

著 者:ロバート・ゲスト 訳:伊藤真
出版社:東洋経済新報社
出版日:2008年5月15日第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 著者は、英国の経済誌「エコノミスト」の元アフリカ担当編集長。アフリカに赴任する前は、英国紙「デイリー・テレグラフ」の日本特派員。「貧しい国々はどうすれば豊かになれるのか」が、著者が最も関心を寄せている問題のひとつ。その答えを求めるために、明治維新から軍国主義を経て奇跡的な経済成長を遂げた日本に、大学で日本語を学んでやって来たのだ。
 そして、著者の関心は今まさに貧困に苦悩する大陸「アフリカ」に向かったわけだ。貧困から抜け出せないでいる国々をじかに見ることで、逆にどうすれば豊かになれるのかの答えを探そうというわけだ。本書に記されているアフリカでの苦労の数々を思えば、ジャーナリスト魂の発露とは言え、よくこんな道を選択したと思う。命の危険に遭遇したことも1度や2度ではない。(自国民の保護を断固主張する)欧米諸国の国民でなければ殺されていたかもしれない。

 前半は気が滅入る内容だ。何故アフリカは貧困にあえいでいるのか、著者が見たその理由が次々と挙げられる。独裁者による破たんした国家経営と国民からの搾取、民族・部族間の憎悪、官僚・役人・警察の腐敗、エイズを始めとする疫病に対する無知・無理解、など。
 どうしてこんなことになってしまったのかは分からない。しかし、今現在の問題の核心は分かった気がする。それは国家を経営する能力を持つリーダーの不在だ。自分や親族・出身部族のためでなく国家のために働くリーダー、外国からの援助を本来の目的に使うリーダー、腐敗した官僚たちに規律を守らせるリーダーだ。
 簡単なことではない。「自分たちを優遇しない」ということは、親族・出身部族の憎悪の理由になり得るのだから。また、アフリカの有能な人材はどんどん流出してしまっている。医者の意見より政治家の判断が、エイズ治療の可否を決める国にいたいと思う知識層はそう多くないだろう。

 後半になって、少しだけ展望が見えてくる。著者の取材も以前に比べれば格段に安全になったし、情報通信技術が社会の風通しを少し良くした。南アフリカは未だに問題は多いながら、アフリカ諸国の民主化と脱貧困の先頭ランナーとして走り始めている。
 そして、著者がもっとも信頼をよせるのは、アフリカに住む庶民が豊かになりたい努力すればなれる、と思っている事実だ。それは、ビールの配送ルートの取材のために、500kmのデコボコ道を、トラックに4日間同乗した著者ならではの視点だ。そんな中で南アフリカの青年が言った言葉「南アフリカ人も一生懸命働けば、日本のように豊かになれる」これを聞いて誇らしいよりも面映ゆく感じるのは私だけではないはずだ。

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