獣の奏者 3.探求編、4.完結編

書影
書影

著 者:上橋菜穂子
出版社:講談社
出版日:2009年8月10日第1刷 9月10日第5刷
評 価:☆☆☆☆(説明)

 本書に先立つ2冊「獣の奏者 1.闘蛇編、2.王獣編」を読んでから2年。待望の続編というか完結編を読むことができてうれしい。2年前のレビューには、「色々なことが着地しないまま物語は終わってしまう。続編がないのなら、これはいただけない。」と、偉そうに書いているぐらいだ。

 前2冊で物語が完結しているかどうかという点では、私と違う意見の方も多くいるようだ。その筆頭は著者自身で、あとがきに「「獣の奏者」は、<闘蛇編><王獣編>で完結した物語でした。」と、また「きれいな球体のように閉じた物語」ともおっしゃっている。
 その著者がなぜ続編を?ということは、あとがきに記されているのでここでは置くとする。ただ、前2冊の物語の中に、これだけの壮大な物語の種が潜んでいたのだから、完結していなかった、ということなのだと思う。著者さえもこの物語の種には当初は気が付かなかったのだと。(「私は気が付いていた」と言いたいのではないので、誤解のなきよう。)

 物語は「王獣編」のラストの「降臨の野」の出来事から11年後、主人公エリンが闘蛇衆の村を訪ねるシーンから始まる。王獣の医術師を目指していたエリンが、なぜ故郷に近い闘蛇衆の村に?と思うが、これは大公シュナンの命で闘蛇の大量死事件の調査に赴いたのだった。
 闘蛇の大量死と言えば、エリンの母ソヨンが死罪に問われた事件を思い出す。エリンにとっては、この調査は母の事件の調査でもあり、過去へ遡る探求の道でもあるのだ。この調査が象徴するかのように「探求編」はもちろん「完結編」も、エリンによる過去のそして真実の探求を描いている。この国の誕生前に神々の山脈の向こうで起きた事件の真実は?

 本書は完結するための2冊だから、あいまいさを残したままでは終われない。様々なことに決着をつけなければならない。もう初々しい若者ではないエリンやシュナンや真王セィミヤは、それぞれに決断をしその結果に責任を負わなくてはいけない。その決断の結果は過酷であり、「もう少し良い方法はないのか」と何の責任も持たない私は思うが、恐らくこれ以外にはないのだ。母とは違う道を選んだエリンのしなやかな強さが印象に残った。ファンタジーの大河ドラマがここに完結した。

 人気ブログランキング投票:「一番好きな上橋菜穂子さんの作品は?」
 (あなたの好きな上橋作品の投票をお待ちしています。)
 にほんブログ村「ファンタジー」ブログコミュニティへ
 (ファンタジー小説についてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

クーリエ・ジャポン レビューコンテストで「副編集長賞」をいただきました。

デジタルトロフィー副編集長賞  以前に書いた「COURRiER Japon(クーリエ・ジャポン)」のレビューが、R+(レビュープラス)のレビューコンテストで「副編集長賞」をいただきました。感謝。

 このコンテストは、レビュー専門のブログネットワークであるR+の企画で、参加者のレビューを参加企業の担当者らが読んで優良レビューを表彰する、というものです。今回は「COURRiER Japon」の編集部の方に読んでいただいたということになります。レビューを書いているブロガーにとっては、こんな嬉し恥ずかし緊張することは他にないですよね。

 そして「COURRiER Japon」のレビューコンテストの入賞特典が、1.デジタルトロフィー(右にあるヤツです)、2.次回の献本レビュアーとして自動認定、3.クーリエ・ジャポン本誌面上にブログ情報を掲載、4.クーリエジャポンWebサイト上にブログ情報を掲載、5.編集部訪問イベントにご招待の5つ。どれも嬉しいけれど、3.と4.が何だかとてもワクワクします。どんな風に載るんでしょうね。

 そうそう、この「COURRiER Japon」のレビューコンテストは来年3月号の第6回まで予定されていて、現在は第2回の11月号分の参加者募集中(16日まで)です。興味がある方は是非応募を検討してみてください。受賞はもちろん、応募することも励みになると思います。

クーリエ・ジャポン レビューコンテストのURL
http://c.reviewplus.jp/courrier/
第1回結果発表のURL
http://c.reviewplus.jp/courrier/01/

魔法泥棒

書影

著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:原島文世
出版社:東京創元社
出版日:2009年8月28日 初版
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 またまたジョーンズ作品。これは、1992年の作品。訳者あとがきによれば、ジョーンズが20年以上の歳月を経て、再び大人を読者対象とする長編に挑戦したものだそうだ。児童文学に分類されているとは言え、捻りの効いた展開と辛口のユーモアが持ち味の著者の作品の中で、本書は比較的素直な部類だ。では「大人向き」とされる理由は?

 物語は主に「地球」と「アルス」という場所の2つの舞台で進行する。地球では「裁定評議会」と呼ばれる魔法使いたちが、世界の安定を保っている。アルスは「五国」と呼ばれる並行世界の1つに浮かぶ要塞都市のようなものらしい。そこでは、地球を含めた異世界の監視と、五国の若者の訓練が行われている。
 そして、アルスが地球の科学技術を盗み取っているらしいと気が付いた裁定評議会は、選りすぐりの魔法使いたちをアルスに送り込む。アルスにいるのが男ばかり(後で判明するのだが、訓練中のため禁欲を強いられている)だと知った評議会が送り込んだその襲撃部隊は..この辺りが「大人向け」の所以だ。

 物語の展開が巧みなのはもちろん、並行世界が地球の科学技術を盗むに至る着想が面白い。いわゆる主人公とされる1人の登場人物はなく、地球とアルスを合わせて10人ほどが次々と役割を演じていく。混乱が予想されるところだが、性格付けなどがしっかりしているので、読み進める内にそんな心配はなくなる。「大人向け」ということを考慮して、ちょっと背伸びしたハイティーンぐらいからならいいかなと思う。

 にほんブログ村「ファンタジー」ブログコミュニティへ
 (ファンタジー小説についてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

四畳半神話大系

書影

著 者:森見登美彦
出版社:大田出版
出版日:2005年1月12日第1刷 
評 価:☆☆☆(説明)

 本書は2005年の書き下ろし作品だが、その前後にも連なる、モリミー作品の王道とも言える「腐れ大学生」モノ。京都という同じ場所(それも下鴨辺りから東山というごく限られた地域)、腐れ大学生という同じ個性の主人公で、こんなに幾つものアホらしくてオモチロイ物語が書けるのは驚きだ。
 いやちょっと待て。出来事の幾つかは使いまわしだし、主人公ばかりか登場する女子学生まで個性が似ている。これは、もしかしたらマンネリに陥っているのでは?という疑問がフツフツと湧いてくる。

 主人公は大学の3回生。これまでの大学生活の2年間を思い返すと、実益のあることは何一つしていない。では何をしていたのかというと、人の恋路を邪魔していた、というどうしようもないヤツ。しかし、そんな彼も大学に入りたての頃はそんなではなかった。数多くのサークルの勧誘からどこを選ぼうかと悩み、「薔薇色のキャンパスライフ」を夢見ていたのだ。
 マンネリに話を戻す。マンネリが「同じようなことの繰り返し」を表すとすれば、四話からなる本書はマンネリそのものだ。なぜなら、ここには主人公が大学3回生のときの物語が繰り返し現れるからだ。しかし、それぞれの物語は、お互いに少しねじれたように違っている。言い換えると、腐れ大学生のアホな暮らしを何度も楽しめる、という趣向になっているわけだ。

 そして、著者はある仕掛けを最終話に施してある。SFやファンタジーにはよくある設定なのだが、著者の手になると、こんなにも体臭が臭ってきそうな話になるかと思う。いやいやこれでこそモリミーなのだ。マンネリだろうがなんだろうが、オモチロければ良いのだ。

 人気ブログランキング投票:「一番好きな森見登美彦さんの作品は?」
 (あなたの好きな森見作品の投票をお待ちしています。)
 にほんブログ村「小説家、森見登美彦」ブログコミュニティへ
 (森見登美彦さんについてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

ぼくとルークの一週間と一日

書影

著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:大友香奈子
出版社:東京創元社
出版日:2008年8月25日 初版
評 価:☆☆☆☆(説明)

 ジョーンズの初期の作品。オフィシャルファンサイトによると、児童書としては3作目、「うちの一階には鬼がいる!」の次に出版されたものだ。表紙裏に「現代英国児童文学の女王の初期傑作登場。」とあるが、確かにこれは傑作だ。
 ジョーンズ作品は一定の需要が見込めるのだろう。邦訳されていない作品を求めて、ここのところ過去へ遡る傾向が続いている。まだこんな面白い作品が残されているのだから、出版社が邦訳作品獲得に熱心になるのも分かる。

 両親を亡くした主人公デイヴィッドは、大おじのプライス家に引き取られ、普段は寄宿学校に行っている。休暇になると、プライス家に戻らないといけないのだが、それがいやでたまらない。大おじをはじめ、その家の人々が家政婦まで含めて邪険に扱われているのだ。
 そんな境遇を打ち破り、プライス家の人々にひと泡吹かせようと、デイヴィッドがやったことは、デタラメに考え付いた呪いの言葉を高らかに唱えること。なんとも幼稚な思い付きだが、これが本当に効果があったのか、地面が揺れてレンガの塀が崩れる。と、そこに現れたのがルークという名の少年だ。二人はすぐに意気投合し、デイヴィッドが必要とすればルークが駆けつけるという仲になる。

 そして二人は、「降りかかるトラブルを協力して乗り越え」「大人たちをアッと言わせて」「面白可笑しく暮らして..」という展開は児童文学的にはありだが、ジョーンズに限って言えばあり得ない。どうもルークは普通の少年ではないらしい。言動がちょっと常識からズレているし、誰かに追われているらしい。事件の背景には少年の手には負えない大きな出来事があって...

 ジョーンズが描く家族や親戚は一クセも二クセもある。今回の大おじたちも例外ではない。でも訳者あとがきにもあるように、「人は見かけどおりではない」というのが、ジョーンズ作品のメッセージ。今回も悪人だと思っていた人がそうでなかったりで、テンポの良い物語の展開とともに楽しめる。

 にほんブログ村「ファンタジー」ブログコミュニティへ
 (ファンタジー小説についてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

沼地のある森を抜けて

書影

著 者:梨木香歩
出版社:新潮社
出版日:2005年8月30日発行 2005年11月5日4刷
評 価:☆☆☆(説明)

 今まで読んだ著者の作品は、時間の流れがゆったりしているというか、私たちとは違う時間と空間というか、とにかく穏やかな感じのする物語だった。現実感が少し薄れた感じと言っても良い。それらに比べると、本書はなぜか心が休まらない居心地の悪さを感じた。
 それは本書が現代の都会を主な舞台としている現実感のせいではない。物語の不思議さ加減で言えば、飛びぬけて不思議な物語なのだ。(「家守綺譚」は妖怪の類が次々に登場する不思議な物語だけれど、100年以上前の日本には居たのではないかと思わせる)何てったって「ぬか床」がうめくのだ。そこから人が出てくるのだ。

 主人公の久美は化学メーカーの研究室で働く独身女性。両親を交通事故で亡くし、兄弟はいない。ある時、二人いる叔母の一人が亡くなり「ぬか床」を受け継いだ。もう一人の叔母の話によると、曾祖父母が故郷の島を出るときにただ一つ持って出てきたもの。その後、代々の女たちが世話をしてきたらしい。
 これがうめくし、人まで出てくる「ぬか床」だ。叔母からは「あなたが引き継ぐしかない」と、家の宿命だと言われたけれど迷惑千万だ。案の定、このぬか床に生活を翻弄されることになる。しかし、これも叔母の言だが久美には「素質がある」らしく、研究者としての知識も助けになって、この不思議をよく理解しようとし始める。

 私が、心が休まらないと感じたのは、ぬか床から人が現れる異様さもあるが、それよりも久美が背負った厄介ごとが憂鬱なものだったせいだ。しかし、久美はしっかりと考えて行動を開始した。物語後半は、久美のルーツに関わるちょっとスケールの大きなドラマに展開する。ちゃんと人の体温が感じられる物語にもなっているところはさすがだ。
 それから、久美の物語に挟み込まれるように、「島」の中で分裂を繰り返す「僕」の物語が綴られる。現実とは思えない暗喩に満ちた物語。まるで村上春樹さんの短編のようだ。この部分は、意欲的な実験作品なのかもしれない。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

恋文の技術

書影

著 者:森見登美彦
出版社:ポプラ社
出版日:2009年3月6日初版
評 価:☆☆☆(説明)

 10ヶ月ぶりのモリミー。今回は全編が手紙、というなかなか凝った趣向だ。実在のものとフィクションを合わせて、往復書簡の形で一連の出来事を綴ったものは数多く出版されているが、本書は、往復している手紙のやり取りの一方だけで綴っていく。返信の分は読者が想像するしかない。

 主人公は守田一郎、京都の大学の修士課程1年生。研究室の教授の命で、大学院に進んだ4月にクラゲの研究のために、能登半島に抱かれた七尾湾に面した「能登鹿島臨海実験所」に派遣された。いやハッキリ言えば飛ばされたのだ。
 家族や友人知己からも住み慣れた街からも隔絶された彼が、そこで始めたことは「文通武者修行」。文通によって文才を磨き、どんな美女でも手紙一本で籠絡する技術を身に着けるという野望だ。(あぁアホらしい)

 こんなわけで、守田が研究室の友人や先輩、家庭教師をしていた小学生、そして偏屈作家の森見登美彦氏!らに対して、半年あまりの間に出した手紙の数々が本書の大部分。友人の恋の相談に乗ったり、小学生の悩みに付き合ったり、作家に恋文の奥義を請うたりと、武者修行だけあって書きも書いたりその数は100通を超える。
 まぁしかし、その内容のクダラナイこと、その行いのナサケナイこと。著者の作品に度々登場する「腐れ大学生」が極まった感じだ。そんなヤツの書いた手紙だから、文章だってグダグダだ。ところが、このサイテーのグダグダな文章が、なぜか面白い(モリミー風に言うと「オモチロイ」)。特に中盤の大塚女史との対決には、片方の手紙だけでここまで描けるかと目を瞠った。

 「こんなの何が良いの?」という人もいるだろう。好き嫌いはあると思う。最初に読む森見作品が本書ではちょっとキツいかもしれない。著者の他の「腐れ大学生」モノがお気に召した方にはオススメ。

 人気ブログランキング投票:「一番好きな森見登美彦さんの作品は?」
 (あなたの好きな森見作品の投票をお待ちしています。)
 にほんブログ村「小説家、森見登美彦」ブログコミュニティへ
 (森見登美彦さんについてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

COURRiER Japon(クーリエ・ジャポン)

書影

編 集:クーリエ・ジャポン編集部
出版社:講談社
出版日:2009年9月10日 発売
評 価:☆☆☆☆(説明)

 R+(レビュープラス)様にて献本いただきました。感謝。

 本誌は分類で言えば「ニュース・総合誌」ということになるのだろう。しかし、他の雑誌のどれとも違うように感じる。本誌は、フランスの週刊誌「クーリエ・アンテルナショナル」と提携した月刊誌だ。ちなみに「クーリエ」とは、元々は在外公館と本国、または在外公館の間での運搬業務。転じて小口の国際宅配便のことを言う。

 そして、本誌は世界中を飛び交う荷物と同じように、国境を越えて発せられる世界の1500を越えるメディアのニュースの中から記事を選び、あるものは翻訳・編集し、あるものは日本で独自の解説も付けて紹介することで、世界から見た「日本」と、世界の「今」を描き出している。こんな雑誌は他にない。
 例えば、私が読んだ2009年10月号では、アメリカ、イギリス、フランス、スペイン、オーストラリア、韓国、中国、ロシア、インドネシア、ミャンマー、タイ....挙げていけばキリがないのではないかと思うほどたくさんの国のメディアが発したニュースが紹介されている。

 また、この号では3つの特集が組まれている。1つ目は「世界が見た”日本のCHANGE”」。日本の政権交代を世界がどう見たかだ。2つ目は「いま、なぜ「アフリカ」なのか」。こちらは勝間和代氏の責任編集。3つ目は「雑誌が「消える」日」。「活字メディアの未来」と題したシリーズの3弾目らしい。
 特集以外も含めて、どれも刺激的な記事だ。「世界が日本をどう見たか」は多くの人が気になるところだ。しかし本誌はその深さにおいて優れてはいるけれども、この切り口は他誌でもテレビや新聞でも散見される。他ではあまり見かけないのは、外国メディアによる自国の調査報道や、日本以外の他国の報道だ。世界はますます同時的かつ多面的になっている。様々な視点で「世界を知る」ことの重要性が増してきている。

 とは言うものの、1つの疑問が頭をかすめる。重要性が増しているとは言え、海の向こうのことには違いない。この雑誌がどのくらいのボリュームの読者に支持されるのだろう、という疑問だ。素人ながら雑誌は発行部数が大事で、そのためにはできるだけ多くの人に読んでもらえる誌面づくりが必要なのだろうと思う。
 この疑問への答えは意外にも本誌の中にあった。「雑誌が「消える」日」という特集の「「エコノミスト」はなぜ売れる?」という記事中に「大衆向けの雑誌では勝負にならない。皮肉なことに、ときには限られた読者を狙ったほうが、世界を制する最善策となるのだ。」とある。キーワードは「ボリューム」ではなく、「アイデンティティ」と「品質」。本誌が目指すところもこれなのだろう。
 そうそう、編集長がこの特集「雑誌が「消える」日」について、「まったく他人事ではありません(笑)」と書かれている。あまりに生々しくて、それを緩和するために(笑)をつけたのだと思う。ホントは笑ってる余裕なんかないのだろう。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

潰れない生き方

書影

著 者:高橋克徳
出版社:KKベストセラーズ
出版日:2009年9月20日 初版第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

KKベストセラーズ様より献本いただきました。感謝。

 ベストセラー「不機嫌な職場 」の共著者による、自分を潰してしまわない生き方の指南書。「不機嫌な職場」は1年前の情報で25万部を突破とあるから、今は30万部になろうとしているのかもしれない。もちろん書名は知っているけれど、残念ながらまだ読んでいない。

 本書のメッセージの主な宛先は、職場で「潰れてしまいそうになっている」人たち、「追い込まれている、追い込まれそうだ」と感じている人たち、「不機嫌な職場」の中で「自分から良い感情を配る」と書かれているそうだが、自分自身にそんな感情がないと思っている人たちだ。
 そういった人たちに対して、本書の一番のメッセージは「あきらめないこと」。そして、小さなことでも喜んだり自分を褒めたりすることから始めよう、ということ。「今日も朝起きられた」でもいいのだ。そして少しずつ前に進むためのステップも書かれている。

 読み進めていて「これは微妙なバランスの上に立つ本だなぁ」と思った。幸いにして、私は身動きできないほどにまで追い込まれたことはない(もちろん会社員としてイロイロありましたが)が、「潰れてしまいそう」な人は非常にデリケートな心理にあることは想像できる。励ましの言葉が傷つけてしまうことだってあり得る。
 そして、本書が発する前向きなメッセージに、重荷を感じる人がいるのではないかと心配になったのだ。本書で救われる人もいれば、追い詰められる人もいるかもしれない。まさに「微妙なバランス」なのだ。
 このことは、著者も充分に意識されているようで、何か所かに書かれた「もうダメだという時には、精神的・物理的に距離を置く、つまり「逃げる」ことです」という、緊急避難路が用意されている。

 さらにこの心配は、本書を最後まで読めばかなり解消される。心の問題はメッセージをの送り手と受け手の間の信頼が大事だ。本書に対する著者の姿勢が書かれた「あとがき」を読めば、本書には著者の心からのメッセージが込められていることがわかり、信頼感も生まれるに違いない。本書の途中で心が折れてしまうようなことがあってはいけない。何よりも先に「あとがき」をまず読んでほしい。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

かっこちゃんI

書影

画  作:池田奈都子
出版社:インフィニティ
出版日:2009年7月26日第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 株式会社インフィニティ・志経営研究所様から献本いただきました。感謝。

 以前にも「テラ・ルネッサンスI」というコミックをいただいた。これらは「「心を育てる」感動コミック」というシリーズで、企業の「人財育成」として、思いやりと優しさ・感謝の心を育んでもらうことを目的としたもの。金融機関やメーカー、人材派遣会社などが社員研修用に購入しているそうだ。
 最初のエピソードで泣いてしまった。私は簡単には泣かないのだけれど、ポロポロと涙がこぼれた。タイトルの「かっこちゃん」とは、石川県の養護学校(特別支援学校)の山元加津子先生のこと。本書には「かっこちゃん」が体験した、子どもたちとの間の話、おもしろイイ話など5つのエピソードが紹介されている。
 主人公として登場する子どもたちは、手足が不自由であったり難病に侵されていたりと、ハンディキャップがある子どもたちだ。その点では、盗作疑惑で回収という結果になった「最後のパレード」の中のエピソードのいくつかと同じなのだけれど、あちらでは泣けない。盗作云々が問題なのではない、ではどこが違うのか?

 「最後のパレード」のエピソードは「ディズニーランドが何をしたか」につきる。なくしたサイン帳の代わりにキャラクター全員のサインを用意する、パレードのダンサーが手を取りに来る、余命半年と告知された子どもを一生懸命励ます。どれも感動的ないい話だけれど、その主役はディズニーランドのキャストの方、ひねくれた見方をすれば、これは営業用の感動だ。
 それに対して本書の感動の主役は、子どもたちとその家族、つまり生の感動だ。よくよく見ると、「かっこちゃん」は何か特別なことをしているわけではない。子どもたちの話に耳を傾け、悲しいときや苦しい時に寄り添い一緒に悩み、時には子どもたちに勇気付けられる。壁を破るのは、子どもたち自身の力と家族の愛だ。「みんなみんなそのままが素敵。」という言葉はいささかありきたりだが、本書の最後に目にするとキラキラして見える。

 もちろん、特別なことはしていない、と言っても「かっこちゃん」は特別だ。特別ではない普通のことが、実は誰にでもできるわけではない。それから「かっこちゃん」は、この子どもたちの大切さや素敵さを、世界中の人に知ってもらうという特別な使命のために本を書き、講演する。それは、ある少女との約束でもある。本書もその使命の一端を担うのだろう。私もたくさんの方に読んでももらえるようオススメする。かっこちゃんと少女の約束のために。
 最後に、読むときは一人でいる時に。誰かが近くにいると、無意識にでも感情を抑えてしまうので泣けませんから

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)