アダムの呪い

著 者:ブライアン・サイクス (訳:大野晶子)
出版社:ソニー・マガジンズ
出版日:2004年5月30日初版
評 価:☆☆☆(説明)

 女性にしか継承されず、遺伝子の組み換えも起こらないミトコンドリアDNAを基に、ヨーロッパの7つの母系集団を描き出した「イヴの7人の娘たち」の著者の第2弾。
 前作は、本当に鮮やかだった。研究者らしく論理的にヨーロッパの人々が、そしてアジアやアフリカの人々までが、数人の女性の子孫であることが導き出された。もっとも、遺伝学の専門家には異論はあるようだ。知人が遺伝学の先生に感想を求めたところ、「人類の起源がたった7人の女性だなんてことはあり得ない」と言われたらしい。「イヴの7人の娘たち」にはそんなことは書かれていない。読むつもりもないということなのだろうか。
 今回は著者の意図が少し分かり辛かった。男性のみに継承されるY染色体が今回のテーマ。「Y染色体でやってもいくつかの家系に分類されました」だけでは、本にならないのだろう。しかし、第2弾なのだから、読者はそれも期待したと思う。
 しかし、本書の主張は、ミトコンドリアDNAもY染色体も意思を持ち、自らのコピーを作るための戦いを繰り広げている、という、いわゆる「利己的な遺伝子」説だ。その傍証も数多く登場する。しかも、Y染色体はその戦いの敗者、このままでは、12万5千年後には男性は滅亡する。男性がいなければもちろん女性だって子孫を作ることはできない。なんという悲劇だ。(正直に言うと、そんな先まで心配しているわけでなないが)
 Y染色体は、受精の際に組み替えによる修復が行われない。だから個体の突然変異がそのまま蓄積されてしまう。重要な遺伝子が傷ついてもそのままだ。しかも、男性の生殖細胞は、数をかせぐために千回もコピーされるらしい、女性の生殖細胞は24回だ。当然突然変異が起きる可能性も高くなる。そして現代人のY染色体はひどく傷ついていいるものが多く、1940年以降、男性の精子の数は激減しているのだという。

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