スルメを見てイカがわかるか!

著 者:養老孟司/茂木健一郎
出版社:角川書店
出版日:2003年12月10日初版
評 価:☆☆☆(説明)

 著者2人の対談を中心としたヨモヤマ話。なんとも言えないフワフワした現実感のない話題が、延々と次々に展開される。
 例えば...「言葉は不思議だ。"リンゴ"と言った時、人それぞれ違う音を出している。書いた字も違う。リンゴそのものだって1つとして同じものはない。それでもリンゴはリンゴ。」または...「標本箱に閉じ込めた昆虫は自然か人工か?...自然と人工の両面を持っている。」といった感じ。こんな話に何の意味があるのか?
 タイトルの「スルメを見て...」というのは、「生きているものをデータ化するには、生きていて動いているものを止めなくちゃいけない。それでも生きているものを相手にしていると言えるのか?」というくだりにほんの僅かだけ出てくる。スルメはイカを干してある時点で動きを止めたもの。現実をデータ化して考えるのは、スルメを見てイカを語るようなものだ、と言うわけ。興味深い指摘だ。
 しかし、この話は本書のキーワードでもなんでもない。ダラダラした話の中にひょっこり顔を出した、少しマシな指摘という以上のものではない。これをタイトルにしていいのだろうか。「バカの壁」が売れに売れたことで、養老本を早く出したい、とばかりに角川書店が、何でもいいから対談させて、そのまま簡単に作った本、という感じがしてならない。口述筆記の「バカの壁」を上回る無責任さだ。
 それでも、心に引っかかった話を1つ。ほとんどの物はコントロールできない。自分の体や意識さえ。しかし、手入れすることはできる。里山のように適切に手を入れて、後は自然に任せる。これで維持することができる。人間関係も子育ても、ほとんどのことはままならない。それは当たり前のことなのだ。

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