ストラヴァガンザ 花の都

著 者:メアリ・ホフマン 訳:乾侑美子
出版社:小学館
出版日:2006年12月20日 初版第1刷発行 
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「仮面の都」「星の都」に続く、「ストラヴァガンザ」三部作の3作目。つまり完結編。時空を超えて別の世界に旅することを「ストラヴァガント」と言い、これまでの2作で、21世紀のロンドンから、15歳の少年のルシアン、同じ中学に通うの少女のジョージアが、16世紀のイタリアに似た国の「タリア」の街の、ベレッツァとレモーラにそれぞれ「ストラヴァガント」している。そして、今回も同じ中学に通う少年のスカイが、タリアのジリアという都市にやってくる。

 タリアの国で行われている「ストラヴァガント」研究によると、ロンドンからタリアにやってくる「ストラヴァガンテ(ストラヴァガントする人)」は、タリアで何らかの役割を担っているらしい。実際、全2作のルシアンとジョージアは、ベレッツァの女公主暗殺事件とレモーラの競馬に絡む陰謀にそれぞれ遭遇し、その解決に重要な役割を果たしている。
 敢えて「解決」と書いたが、それは一方からの見方であって、事件や陰謀を仕掛けた、タリアの実質的な支配者である「キミチー家」の側から見れば、「邪魔」されたことになる。当然復讐の機会を狙っているわけだ。それに、「星の都」のレビューに書いたとおり、このシリーズでは、敵役のキミチー家の描写が丁寧で、単なる「悪役」として扱われているわけでない。

 と、長くなったがここまでは前2作の内容。こういう一触即発の状況で、キミチー家の若者たち4組の結婚式がジリアで行われる、というのが本書の設定。タリア中のキミチー家の者が集まり、そこにベレッツァの女公主も招待され、ルシアンも同道する。不穏な空気の中で、事件は起きるべくして起きてしまう。

 完結編だけあって、著者は大きなスペクタクルを用意していた。どうして同じ中学の生徒がストラヴァガントしてくるのかも説明された。積み残しになっていた、少年たちの恋心の行方には、著者なりに考え抜いた決着が提示された。これで完結して何の問題もない。でも、まだ読みたい。掟破りでもいいから続編を書いて欲しい。

.....と思ったら?何と、あるじゃないですか! → 「Stravaganza City of Secrets

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2つのコメントが “ストラヴァガンザ 花の都”にありました

  1. 積 緋露雪

    私は貧乏な物書きです。賞は私が読んでもゐない作家に私の作品が評価されるのを嫌って、忌避しています。私は現在、『夢幻空花なる思索の螺旋階段』『審問官 第一章「喫茶店迄」』『幽閉、若しくは彷徨〈第一部〉』を出版してゐます。宜しければお読みください。文学賞を取った小説よりも深淵な内容だと自負があります。

  2. YO-SHI

    積 緋露雪さん、コメントありがとうございます。

    お名前と著書のことは、Twitterの#bookJPタグでお見かけしておりました。
    会話によってテーマを奥へ奥へと掘り下げる手法にオリジナリティを感じました。
     

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