経済は感情で動く はじめての行動経済学

著 者:マッテオ・モッテルリーニ
出版社:紀伊國屋書店
出版日:2008年4月20日 第1刷発行 5月12日 第3刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 突然だけれど質問。あなたならどちらを選ぶ?

  A 3万円が確実に儲かる
  B 15万円が儲かる確率が25%で、まったく儲からない確率が75%

 答えは人それぞれだと思うが、本書が紹介する調査では、Aを選んだ人が84%だったそうだ。少し数学や経済学に明るい方ならお分かりのように、期待値はAが3万円(3万円×100%)、Bは3万7500円(15万円×25%)で、Bのほうが高い。Bを選ぶ方が合理的であるにも関わらず、Aを選ぶ人が圧倒的なのだ。。

 本書は、このように「不合理」な人間の経済行動を論じた「行動経済学」という学問領域の本で、「予想どおりに不合理」と同じジャンルだ。「伝統的な経済学」は、常に合理的な行動をする「ホモ・エコノミクス」を前提とする。上の質問で分かるように、多くの人は不合理な行動もしてしまうので、それでは現実への適応が難しい(もっと言えば「役に立たない」)。「行動経済学」は、その補完でありアンチテーゼでもある。

 では次の質問。あなたならどちらを選ぶ?

  C 10万円を確実に損する
  D 15万円を損する確率が75%、損失ゼロの確率が25%

 本書によれば、Dと答えた人が87%だったそうだ。期待値はCが-10万円(-10万円×100%)、Dは-11万2500円(-15万円×75%)。Dの方が損害の見込み額は大きい。どうらや人は、得をする時は安くても確実さを優先し、損をする時には危険でも賭けに出てしまうらしい。これではギャンブルで勝てないはずだ。

 本書ではこの他に、「赤味80%の豚肉は売れるけれど、脂肪分20%の豚肉は売れない」「何かを「した後悔」と「しなかった後悔」ではどちらが大きいか」「100万円得した喜びより、100万円損したショックの方がはるかに大きい」など、面白そうな話題が豊富。設問が約50個もある。重複もあるようだけれど、話のネタに良さそうだ。

 終盤の脳科学と経済行動を結びつけた「神経経済学」は、興味深いけれどまだその有用性が見えてこない。

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