魔法の代償(上)(下)

著 者:マーセデス・ラッキー 訳:細美瑤子
出版社:東京創元社
出版日:2012年2月24日 初版
評 価:☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 「魔法の使徒」「魔法の誓約」に続く、「最後の魔法使者」シリーズ三部作の3作目、つまり完結編。このシリーズは、「ヴァルデマール年代記」と呼ばれる著者の一連の作品群の1つで、主人公ヴァニエルは、後の年代を描く作品の中では、「完全無欠にして最強」の「伝説の魔法使者」となっている。完結編の本書では、ヴァニエルが伝説化されるに至る経緯が描かれている。

 前作「魔法の誓約」の時に既に、味方の「魔法使者」が次々と命を落とし、ヴァニエルは、ヴァルデマール国になくてはならない人材となっていた。その状況は本書でも変わらず、加えて国王ランデイルが重篤な状態となり、ヴァニエルの双肩にかかる重圧はさらに大きくなっていく。

 それでも前半は、ヴァニエルに新しい恋人(ちなみにヴァニエルは同性愛者)が現れたり、父親との確執に融和が見られたりと、国のために身体と命を削るような長年の暮らしに対する、ご褒美のような平穏が訪れる。
 しかし、「完全無欠にして最強」と伝説化されるには、それなりのインパクトのある出来事があった。そしてヴァニエルは大きな代償を払うことになる。後半はそれに向けて突き進む。目を覆いたくなるようなシーンもある。

 異世界ファンタジーの世界観に、ずっぽりと浸ってしまうシリーズだった。このシリーズだけで完結しているのだけれど、恐らく「ヴァルデマール年代記」に登場する「伝説の魔法使者」ヴァニエルの実像、という意味付けをして初めて、このシリーズの本当の面白さが味わえるのだろう。「年代記」には20数作品もあるようだけれど、どうしたものだろう?

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