黄昏の岸 暁の天


著 者:小野不由美
出版社:講談社
出版日:2001年5月15日 第1刷発行 5月29日 第2刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「十二国記」シリーズの第6作。第1作の「月の影 影の海」で陽子が「慶」の国王に就いてから約2年。今回は登場人物が多い。陽子はもちろん、「東の海神 西の滄海」の主人公の尚孝と六太、「風の海 迷宮の岸」の主人公の泰麒と女武将の李斎、「風の万里 黎明の空」の祥瓊と鈴...。いわゆるオールスターキャスト。これまで線としてつながっていた物語が、面としての世界に広がった。

 オールスターキャストの中で主人公を一人挙げるなら李斎だろう。「風の海 迷宮の岸」で「戴」の国王の知遇を得た李斎は、そのまま戴国の首都州の将軍に就いた。しかしわずか半年後の政変で、国王とそれを補佐する泰麒が共に行方が分からなくなってしまった。それから数年間、王と泰麒が不在の戴国は荒廃を極めていた。

 この戴国の政変とその後の泰麒の物語と、泰麒救出を目指す慶国を中心とした物語の、数年間の時間差がある2つの物語が並行して進む。その間を繋ぐのが李斎だ。李斎は、逆賊として追われ妖魔に襲われ満身創痍で、慶国の王の陽子の助力を乞うために慶国の王宮に駈け込んで来たのだ。

 登場人物だけでなく、物語が扱うテーマも豊富だった。国の政(まつりごと)を行う難しさ、人としてどう振る舞うべきか、天の理(ことわり)と人の道のありよう、行き違いが生む悲劇、それぞれの故国への思い。ハッピーエンドとは言い難い結末が粛然とした余韻を残す。

 陽子が物語に戻ってきてうれしい。「風の万里 黎明の空」で反乱を鎮めたものの、国の復興は道半ばといったところながら、着実に進歩はしているようだ。「よそ者、バカ者、若者が改革を担う」と言われるが、異世界から来て、この世界の仕組みに不案内な、高校生だった陽子は、まさに「十二国」の改革者になりそうだ。

 本書は、このシリーズに先立って発表された「魔性の子
」と対になる作品らしい。実はそれと知ってこれまで読むのを取っておいた。ようやくここまでシリーズを読み進めたので、近々に「魔性の子」に取り掛かろうと思う。

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