スモールマート革命 持続可能な地域経済活性化への挑戦

著 者:マイケル・シューマン 監訳:毛受敏浩
出版社:明石書店
出版日:2013年9月30日 初版第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 以前に新聞の書評欄で紹介されていて興味を持った本。

 本書の主張をうまく言い表す言葉がある。「ローカル・ファースト」。これは米国の「地域経済活性化ビジネス協議会」という団体が掲げるスローガン。訳すとすると「地元優先」。「地元のモノを買おう(バイ・ローカル)」の考えを中心として、投資や人材育成から政策決定、エネルギー資源に至るまで、地元を優先的に考える(地元にないものは、できるだけ近くの外部から移入する)。こうした地元のリソースを最大限利用する経済活動を示唆するものを、本書では「スモールマート」と呼んでいる。

 例えば、同じものを買うのであれば全国チェーンではなく、地元資本のお店で買おうということ。これは、これまでにも様々な場所で唱えられてきた考えではある。そして、理念としては分かるけれども、全国チェーンの方が安いし便利だし...というのが大方の反応だと思う。

 本書の特長はその反応を覆すべく、地元資本のお店で買うことのメリットを追求したこと。地元のお店で買ったお金は、その一部が給与として従業員に支払われ、その従業員は近所の映画館でチケットを買い...と循環する。お金が地元に留まっていれば、それだけ地元が活性化する。問題はどのくらい留まるか?ということだ。

 この「どのくらい」を経済用語で「乗数」というのだけれど、全国チェーンで買うと当然この「乗数」が減少する。ある調査によると地元の書店で支払われた100ドルのうち44ドルが地元で流通したのに対し、チェーンの書店では13ドルだった。こんな感じで、チェーン店で買うと、お金は外に漏出していってしまう。それによって地元は、経済、雇用、納税、安定性を傷つけられてしまう。

 本書は、このようなことを数値や実例を挙げながら、ほんとうに根気強く説明する。現在TPP交渉が重要な局面を迎えているようだけれど、この本の内容に沿えばTPPに利はない、国益もない。そうは言ってもグローバル経済に参加できなくてもいいのか?という意見もあるだろう。著者はその点にも答えている。「「他に方法はない(There Is No Alternative )」を受け入れる必要はない」。このスモールマートが代替案なのだ。

 最後に。とても胸に落ちた言葉を紹介する。「一回一回の買い物は基本的には一種の投票行動」というものだ。それはそのお店への投票であり、そうしたビジネスとコミュニティへの投票、つまり賛同の意思表示なのだ。政治の選挙はたまにしか行われないが、買い物は毎日でもできる。しかも誰でも(子供でさえ)参加できる。

 実は、私が入っているSNS「本カフェ」でも似た話になったことがある。「里山資本主義」を読んで、では私たちに何ができる?となった時に、「地元のものを買うぐらいかな」と..。そのぐらいしかできることはないねぇ、という幾分ネガティブな意味合いだったけれど、「そのぐらい」であっても、投票行動・意思表示であるならば、続けることで何か変わるかもしれない、と思った。

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