女のいない男たち

著 者:村上春樹
出版社:文藝春秋
出版日:2014年4月20日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 村上春樹さんの最新刊。「東京奇譚集」以来9年ぶりの短編集。「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」「女のいない男たち」の6編を収録。

 表題作「女のいない男たち」が書下ろし、その他は昨年の11月から今年の2月にかけて文芸誌に掲載された作品。しかしよくあるような、「短編が何本かたまったのでまとめて単行本にしました」という形態のものではない。「女のいない男たち」という言葉をモチーフとした一連の作品群として執筆されたものだ。

 正確には「女を失った」男たちの物語が綴られている。「ドライブ・マイ・カー」は妻を亡くした俳優、「独立器官」は恋人に裏切られた医師、「木野」は妻の不義が理由で離婚したバーの店主、「女のいない男たち」は昔付き合った女性を亡くした男の物語。「シェエラザード」は軟禁状態にある男が主人公で、連絡係の女性を失う予感がする。「イエスタデイ」が描く男は、失う以前にある女性を得ることができない。

 こんな感じで、モチーフが同じなので当然なのだけれど、設定が似通ったものになっている。では、似通った物語が並んでいるのかというとそうではない。それは、若者たちのユーモアを含んだ乾いた会話であったり、大人の男の少し強がった回顧であったり、キリキリとねじ込むような破滅であったり、フワフワと現実感の乏しい物語であったり、得体のしれないモノの影が見える奇譚であったりする。

 上に書いたようなバリエーションは、過去の村上作品のどれかを思い出させる。また、本書で描かれるような「欠落」は、村上作品の多くでテーマとなっていることもあり、それぞれ雰囲気がどれも違うけれど、どれも「村上春樹らしい」。だから、村上春樹ファンには馴染のある本となるだろうし、そうでない人は、長編ほどには読む負担がかからないので、気軽に読んでみたらどうだろう?

 「らしさ」をもう2つ指摘する。1つ目は、「女のいない男たち」がモチーフだから仕方ないかもしれないけれど、どれもこれもセックス絡みの物語だということ。2つ目は、短編だからそうなのかもしれないけれど、着地点のないエピソードが少なくないこと。これらの内の一つぐらいは、もしかしたら長編に取り込まれて再生されるのかもしれない、と期待している。

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