もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

著 者:岩崎夏海
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2009年12月3日 第1刷 2010年12月7日 第23刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 タイトルが長いので略して「もしドラ」。「今さら?」あるいは「今ごろ?」感は否めない。公式サイトによると、電子版もあわせて253万部、NHKでアニメ化され、その全10話が明日25日から月~金で一挙放送される。コミックスは5月2日に発売、映画は6月4日に公開。何ともすごい勢いだ。「お化け商品」だ。

 内容は長いタイトルが表す通り。高校の野球部の女子マネージャーが、「マネジメント」という本を読んで、野球部の組織改革を進める。目指すは「甲子園」。「マネジメント」は、オーストリアの経営学者であるドラッカーが、1974年に刊行した経営学の大著だ。
 この本について、本書の中で書店の店員が、「「マネジメント」について書かれた本の中で、最も有名なもの」と言っているが、それはウソでも誇張でもないと思う。25年余り前に、マーケティング専攻の学生だった私も読んだ。マーケティングや企業経営を志す人で、この本を知らない人ないない、とは言わないまでも少数派なはずだ。

 だから興味はあった。一方で、「夢をかなえるゾウ」のレビューにも書いたが、私は過去の経験から「バカ売れしている本はハズレが多い」と思ってしまっている。本書もあまり期待できないと思っていた。「マネジメント」を読んだことがあるという、(全く無意味な)自意識も期待に水を差したことも否定しない。
 結果として、良くも悪くも読む前に私が思っていた通りの本だった。決して「ハズレ」とは言わない。読みやすくて、ちょっとタメになって、さらにちょっとイイ話。読んで損はない。ちょっと悲しい出来事があることを除けば、暗い気持ちになることもない。しかし、そんな本は他にもたくさんある。

 ただ、私は「マネジメント」を読んだけれど、主人公のようにそれを現実に当てはめようと、真剣に考えたことはなかった。その反省は、私が本書から得たものだと言える。...と、ここまで考えたところで、ある考えが閃いた。「この本自体が「マネジメント」の成果だ」

 本書の中で「真のマーケティングとは何か?」と問う場面で、「マネジメント」はこう答える。「顧客からスタートする。...「顧客は何を買いたいか」を問う」。
 一見難しそうな「組織経営」を分かりやすく伝える「読みやすくて、ちょっとタメになって、さらにちょっとイイ話」。そして「女子高校生」と「経営学の大著」のギャップ。多くの人の注意を引き、多くの人の欲求に応える。まさにマーケティングの成果がここにある。

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3つのコメントが “もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら”にありました

  1. 知磨き倶楽部〜読書で「知」のトレーニングを!〜

    ■書評■ もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

    その著作を読んだことがあるかどうかは兎も角として、経営学の大御所P.F.ドラッカーの名前を知らないビジネスパーソンはいないだろう。
    『マネジメント』や『経営者の条件』など、それこそ「バイブル」として……

  2. 日々の書付

    もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

    話題になっている「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」を読みました。難しい内容かと思いきや、話の内容は爽快な青春小説で、文章自体も読みやすい。
    そして、タイトルにストーリーの内容が凝縮されています。
    主人公みなみが、入院した親友・夕紀の変わりに野球部の女子マネージャーをすることになり、「マネージャー」と「マネジメント」の区別もつかないままドラッカーの『マネジメント』に出会い、本に書かれていることを手本に、野球部を改革し、甲子園を目指す物語です。
    「夢をか…

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