著 者:柚木麻子
出版社:文藝春秋
出版日:2015年3月10日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)
今年の山本周五郎賞受賞、直木賞候補作品。「ランチのアッコちゃん」「本屋さんのダイアナ」を読んで、著者の作品の女性の性格や関係性の描き方がけっこう好きだった。直木賞候補になった時に本書を知って、いつか読んでみようと思っていた。
「これまで私が読んだ作品とはだいぶ違う」と、4分の1ぐらい読んだところで思った。これまでの作品は、足元がしっかりした見通しのいい物語だったが、本書は違った。うっかりするとぬかるみに足が取られそうだし、どこに連れていかれるのかも分からない。
主人公は栄利子と翔子の二人。ともに30歳。栄利子は大手商社に勤める会社員。仕事はできる方でしかも美人、独身。翔子は専業主婦で「おひょうのダメ奥さん日記」というブログを書いている。ブログはランキングに入るほどには人気がある。
翔子がカフェで、編集者とブログの書籍化のことを話しているところに、栄利子が居合わせた。前々からブログの熱心な読者であった栄利子が、翔子に声をかけて二人は出会う。そしてすぐに「友達」になった。
栄利子が真面目な商社マンで、翔子がぐうたら主婦、という取り合わせで、共通点は女友達がいないこと。二人とも「欲しい」と思っていたので、これは幸せな出会いだった。ところが、翔子がブログの更新を怠ったことから、二人の気持ちにズレが生じて、やがて修復不可能な事態に発展する...。
直木賞の選評で、林真理子さんが本書について「主人公の女性に女友だちがいないというのも不自然」と、言われたそうだ。「女友だちがいないのは不自然」。その言葉がまさに、栄利子や翔子の「孤独」の裏付けになっていて皮肉だ。
本書を読んで「女はコワイ」と思うのは簡単。でも「友達」「親友」って何?とか、「正気」と「狂気」とか、考えると違う景色が見えそうだ。ぬかるみに足を取られそうだから、敢えておススメはしないけど。
最後に。この本を女性が読むとどう感じるのだろう?
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