個人を幸福にしない日本の組織

編  者:太田肇
出版社:新潮社
出版日:2016年2月20日 発行
評 価:☆☆(説明)

 著者は組織学者。「組織論」というと、目標を達成するための組織運営のあり方を研究する学問だけれど、著者の研究テーマは違うようだ。著者は、個人の視点から組織を研究している。「最終的に個人の利益につながらないような組織は無意味」と言い切る。

 組織の視点と個人の視点では見えるものが違う。例えば、会社の業績がよいことが、従業員によってもよいとは限らない。休日返上で働かされたり、サービス残業が増えたりするからだ。

 このように、ある意味正反対の視点から見たためか、一般的な通説とは逆の見解が並んでいる。「組織はバラバラなくらいがよい」「管理強化が不祥事を増やす」「厳選された人材は伸びない」「大学入試に抽選を」「地方分権は自由や平等、公平を脅かす危険がある」

 なかなか面白い切り口からの論考で、問題提起としては興味深い。例えば「管理強化が不祥事を増やす」では、不祥事を6つの類型に分類して、それぞれに及ぼす管理強化の影響を分析する。確かに管理強化が必ず不祥事の減少につながるとは言えない。

 問題は「それならどうすればいいのか?」。著者も提言を試みてはいるが、それが頼りないことが残念だ。あとがきに「改革のシナリオを十分に示せなかったかもしれない」と書いている。大事なことが書かれていないという感じがぬぐえない。そういうわけでちょっとカラいけれど☆2つ。

 ただ、個々の指摘は有用なものもあった。日本人は「勤勉でもなければ」「仕事に対する熱意もなく」「会社への積極的な帰属意識はなく」「チームワークも良いとはいえない」。通説とは反対だけれど、こちらの方が真実だと思う。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です